東武ストアのちかくにある落花生直売所に寄りたかったのにー

昨日は川村記念美術館でマークロスコみてきました。千葉までは電車1本なんでいいんですけどその先が遠い。おまけに行き先がちがう電車のっちゃうと駅間がやたら長くてひきかえすにも時間くうし佐倉は佐倉で駅内にみやげひとつ売ってねーし、じゃーせめてご当地モノでも食ってこうと思っても祝日でどこもキチッとおやすみでなんにもくえねー有様(結局夕方までのまず食わず)。つーか駅から美術館までバスでしばらくいくんですけど、道中によさげな店あっても途中で降りたりできないからいけないんですよね(駅からだと自転車でもかなりな距離だし)。希望者は降ろすとかしてくんないかねアレ。
ロスコは作品の前に人がくると誂えたようにおそろしく映える。ロスコ以外の絵画もほかの展示室にあるからくらべるとすごくよくわかるんですけど、抽象画だろうと具象画だろうとおよそ作り手が自分の感動を伝えるために描いたもの、自分自身の官能を詰め込んで炸裂させているものは、その作品の前にひとり立ちふさっただけで作品自体が台無しになってしまい、鑑賞者は作り手の意図を遮る邪魔者でしかなくなる。平面だけといわず、ふつうなら作り手が自分の妄執でつくりあげたものは全体像がみえてこそはじめて感動が伝わる。作り手こそが主役なのであって、何ぴとたりとも介入してはならない。一般的なつくりかたのものはほとんどそうだ。ところがロスコの作品は鑑賞者をまったく拒絶しない。それどころか、どの方向からどんな背格好の者がこようとロスコ作品に背景を捉えられたすべての者はたちまちくっきりと存在感を発揮する。ロスコについては前知識として鑑賞者を包みこむとか、壁画として描かれたということしか知らなかったですが、展示の際の作品の位置や壁の色や明るさ等の指定を厳密に決めていたということと、あくまで壁画だったということからして、ロスコはもしかして自分を全面に出すよりもむしろその空間にくる鑑賞者のほうを優先して考えてたんじゃないんですかね。それは俺様のちからをみろ的なナルシスティックの極みである一般的なアーチストの方法からするとひかえめというか謙虚すぎるつくりかたにみえる。ロスコ作品のなかに人がさしかかるところをしばらく眺めてたんですけど、ぜんぜん邪魔じゃなくて、むしろなんか鑑賞者がはいることで次々と新しい空間というかデザインが立ち上がるふうにみえるんですよね。しかもどんな色のどんな形の服着てようとマジめちゃめちゃ色鮮やかにみえるっていうか。中原さんの絵は抽象的(デザイン)な塗りを背景にした上に猥雑で扇情的なコラージュがでーんと貼られたものですが、ロスコの場合はその背景の塗りのみがあるカンジで、コラージュとなるのは鑑賞者。人がロスコ絵の前にくるたんびになにかこう雑誌の表紙デザインがあっというまにできあがってはまたちがうものが次々と、みたいなふうになってた。そういう目的だったらてっとりばやく壁とかつくったり建築のほうやればいいじゃん?と思うんですが、あくまで絵であることが重要なんだと思う。あの窓枠やドアのようなもやっとした四角形の色はちょっと見だれでもできんじゃん?とか思いがちなんですけど、あの絵の周囲や中に鑑賞者がはいったときの異常な映えかたはちょっとそこらにはない質感ですよ。これ実物みないとどうにも説明しづらいんですけど、あの塗り力はそんじょそこらのもんじゃないです。建築にしてしまうと運べないし、もし災害で壊れたら終わりだしなあ。条件さえ揃えばどこでもロスコの精神が再現できるという点では絵画が最適なんじゃないんですかね。なにしろ人を拒絶せずかつ自分自身もちゃんと保っているという絵画作品としてはそうとう希有なつくりかたのものです。もし実物をみにいったらほかの絵画作品の前に人が重なっているときと、ロスコの前に人が重なっているときを注意深く比べてみてみるといいよ。ロスコ作品の近くや真ん前に人がいるときにはその場面がどの位置でもデザインされたイチ場面のようにみえるよ。包み込む包み込むって言われてんのは鑑賞者が作品にかぶさったときのことをちゃんと考えてたってことなんすね。なんかエンターテイナーだなロスコ。空間でデザインであって絵画でもあるという。描かれた筆致がなにかにみえるとかはまあ人によってちがうんで言ってもしょうがないけど、1958年のUntitledは炎みたいに思いました。あと描くのがなんで四角い枠のようなものなのかというのは、人の住処にはそういう直線があふれてるからなのかな?とかちょっと思った。つーかあれで曲線とかだとたぶん鑑賞者がはいったときに均衡が保てなくなるんじゃねーかな。わからんけど。あと解説にチラッと書いてありましたけど、取り巻きの画商とかがロスコを独占したいがゆえにロスコに人を近づかせないようにしてたとかで、晩年のロスコはかなり孤独だったとか。鑑賞者のことを考えてものをつくるような優しい人なのに人から遠ざけられたりして悲惨だな。売ってくれる人だから強いことも言えなかったろうし。ロスコを悲しませるようなバカは無間地獄にでも落ちてしまえ。

観終えて出てきたら美術館の前の池のほとりにでかいガチョウがいて芝生のうえをヨタヨタ歩いてた。