ハーストってふつうにプロ絵描けんのな

家の人への連絡よりついった投稿を優先してしまった…!文明の利器に脳をかきまわされた!!!もうだめだー!!
つーわけで昨日仕事後に医学と芸術展(森美術館)みてきたわけですが、なにしろここの所蔵品展つーよりクエイ兄弟ファントムミュージアムで映ってる品物の展覧会なのでクエイ人形実物展示と同レベルにクエイファンにとってはマスト鑑賞な展すぎます。展示のいちばん最後に大スクリーンでファントムミュージアムがエンドレスにかかってるあたりようわかっとるやないけ森キュレーターよぅ!と心のなかで森キュレーターの背中をバンバン叩きました。展示作品としてはおもに1600年〜1800年あたりのヨーロッパ(アジアのも多少あります)でつくられた医学や医術に関する書物だの絵画だの外科道具やなんかが展示してあるもので、神聖なヒトの体を切ったり貼ったりするとはなんたる悪魔の所業かー!みたいにいちいち宗教が乱入してくる感覚がまだまだ残ってる時代な関係で、だめだといわれるとよけいみたくなる作用が働いて人体御開帳そのものがけっこうな見世物として認識されてたらしく、絵画作品でもちいさな闘技場のように座席が円形状になってる大学教室での解剖真っ最中のシーン(ギャラリーが固唾をのんで見守ってる)とかが題材にされてるわけです。ほかにも保健室(理科室?)にかかってるような筋組織だけの人体図とか血管だけの人体図とかもありますが、やはり1700年代に描かれたみょうに芸術性をぶちこんだ人体構造絵画がヘンでおもしろいです。展示のしょっぱなあたりにかかってるダゴティという画家の絵なんですけど、臓器や胎児のいる子宮がむきだし(モチすっぱだか)の状態で楽しそうにポージングしてる女性の絵とかやってることと表情が不自然すぎておもしろいですし、アルビヌスって画家の版画は筋肉がむきだしの男がポージングしてる背後になぜかでかいサイがいる構図で、説明によると当時はサイがものすごく珍しい動物で、サイを描くことで見世物的な相乗効果を画家が狙ったんだとか書いてあった。「皮膚はがされた人体+サイ」が売れ筋だったのですね。ほかにはトーマスPホールって画家の「薬剤師の意見を支持し、オリバー・ゴールドスミスの医療アドバイスを拒否する患者」って題名の油絵があって、ぐるぐるしたヅラと金ぴかの服きた医者と思しき男がプンスカした顔で部屋の扉に向かってる背後で、ベッドに横たわった患者と思しき青白い顔した美少女(ちょっと微笑んでる)の脇で高慢なカンジでふんぞりかえってる薬剤師と思しき男のいる構図なんですが、タッチこそ写実的な油絵ですけど一歩間違うと諷刺漫画になりかねないようなユーモラスな場面で、この場面をわざわざ手間暇かけてでかい油絵にしなきゃならなかったのは一体どういうわけなんでしょうかね。薬剤師に客とられた医者のほうの腹いせ的な注文だったのかな。あとケタムって人の「あらゆる武器と傷の位置を示す男」っていう図版では体のいろんな箇所に色々グサグサ刺さってる状態でポージングしてる男の絵だし、あそうそう、解剖学シアター題材の油絵ってなぜかぜったい犬がいるんですよね。解剖してるんでもちろん屋内なんですけど、犬がただいるだけならまだしも解剖中にこぼれた臓腑を喰らってる描写(ホガース画)があって、野良犬とかがニオイ嗅ぎ付けて来ちゃってたのかなーと思いました。解剖学シアター絵では油絵だと背後にいるはずのないガイコツがいたりと「芸術」名目で若干ファンタジーがかっちゃうのに対して、ホガースとかランバーグみたいな諷刺画家の絵がなんかいちばんリアルだしはっきりとよく描かれてた気がした。臓腑へのいいかげんなファンタジー描写がないというか(ちょっとしたハミ出描写でもちゃんと腸っぽく描いてるし。実物みて描いたんだな、というのが伝わってくる)。西洋画がほとんどのなかで日本のモノもちらほら出てまして、狩野一信の五百羅漢図のなかの神通力で病をどうにかしようとしている場面を描いた絵がでててちょっとおもしろかった。河鍋暁斎さんのは期間によって展示ブツが変わるそうで。絵画でよかったのはクーパーの「癌手術治療の寓喩」っていうベッドに横たわる女性の左胸を刺す、天井を覆うほど大きな青い蠍の毒針を天女のような存在が切り離そうとしている絵とか、そのとなりにあったぐったりした女性を外科医とおぼしき男と骸骨が奪い合ってるサリガーの絵とか、あとおいらツボにキたのがアーネストボードの「歯科手術で初めてのエーテル使用」って題の油絵なんですが、部屋の暗がりで1人掛けのソファーに座ってる背広の男が立った男から白い布を口にあてられて気絶してる光景で、その布を押し当ててる男のうしろに何人か男がいるんですが、題がなければ数人がかりで謀って殺人犯してる場面にみられてもしかたないような雰囲気の絵で、なんとなくホームズらへんの殺人がらみの小説の一場面のようでスキ。絵画のほかは象牙でつくられた人型フィギュア(内蔵取り外し可)で、いくつかあったうちのフランスでつくられたという1-15がものすごくなまめかしくてほしくなった。遠目でみたときには女性フィギュアかな?と思ったんですが、説明に男性って書いてあってよくみたらちんこもあった。つーかこれだけ異様につくりが精巧な上ていねいで、足や腕の関節あたりが微妙にクッと曲がってて女がしなをつくってるみたいな、なんともいえずやわらかい風情なのよ。首も微妙にかしげてるし。象牙の質感てのも乳白色でエロい。この20cmもないくらいの絶妙なつくりの象牙肢体が赤いビロードの上に寝かされてるんだからほしくもなります。つくった奴確実にホモだろ。遠目でみたらおんなにしかみえないような色っぽいつくりなのにあえてちんこつけるんだもんな。よこに並んでる象牙肢体はほぼぜんぶ女性型ということでしたが、この1-15のなまめかしさにくらべるとぜんぜんです。説明ではこの象牙製解剖模型はつくられてた当時も収集家がいたそうですがあたりまえすぎる。ふつうにほしいです。ふつうにほしいですといえば3-8の女性頭部を切開した蝋製模型もサイコパス的な欲求を刺激されて危険です。嗜好品以外のモノでは実際に使われてた義肢系のもゾックゾクしました。2-54のファントムミュージアムにもでてくる鉄製の義手はなんかもう鉄パーツのひとつひとつがいちいちアールヌーボー風な優美な形につくられてて、アンティークなアンドロイドを思わせる美しい完成度を誇ってます。指先の骨董的な機械美にうっとりしちまいましたよ。手首に鉄製の花模様のボタンみたいなのがついてて、それがどういう働きをするのかはファントムミュージアムをみればわかります。あと背の部分が木でできた車椅子にも似たようなうっとり感覚をおぼえた。現代の最先端義手は便利なんだろうけどこの風情がまったくないですな。1800年前後の医療器具ってなんかやたら美的感覚を忘れないすぎるというか、医療用ノコギリにもこまかい唐草模様の装飾がガーッと入れられてるし(ギコギコされる患者さんのきもちに配慮したとかなんですかね)、なにかと芸術的なものをいれずにいられないところがなんか笑える。なんか笑えるといえば拷問器具にしかみえない医療道具のうちのベッドごとすっぽり覆った木箱の上に設置されたスクーターくらいある巨大ふいご「鉄の肺」(呼吸困難に陥った患者の肺に空気を吹き込むものらしい)とか、木の棒が6本立ち並んで電線のようなものがぐるぐる巻き付けてある電話ボックス大の「電気療法機」(ヒステリーとかが治るらしい。患者の体内に苦痛なく電流が流れるとか書いてあったけど本当かなー)とかドリフかよこわいと思った。あとは2次大戦時にシンンガポールで捕虜になった英軍兵が墜落した飛行機部品で自作した義足ってのも想像をかきたてられてよかった。ついほしくなったのがテイラー社とミュラー社のガラス義眼セットで、あんなの差し出されて結婚せまられたら即了解してしまうなーとポワーンとなった。よーくみると毛細血管とかもつくりこまれてるし、よこからみると瞳の部分が盛り上がってるしですごく精巧にできています。そしてこの義眼も赤いビロードの上に乗せられています。もう健康よりも美が欠かせないといわんばかりです。あそうそう、医療瓶みてるときに男の人が隣の展示みてふきだしてて、なにかと思ったら男性用オナニー防止器ということでちんこ型の鉄製カバーがありました。ちんこひんやりしそう。あとからきた青年客が展示の説明もみずに形状だけ遠目でみて「こういうかっこいいの部屋に置きたい!」とか指さしながらはしゃいでましたが、説明よんで絶句してた。ここらへんの展示ではダーウィンがもってたという象牙と鯨の骨でできた杖があって、持ち手のところが骸骨で、ガラスだか宝石だかわかりませんが両目に緑の光る石がはいっててイカしてた。展示さいごのほうは現代美術ちっくなのが中心で、ピッチーニの子供のまま老いたふうリアルドールゲームボーイ(電源入ってるのがちょっとこわい)に夢中になってるものとか、ヤンファーブルの真ん中から木の生えた脳模型は頭山っぽかったですし、ピルが数千個縫い付けられたウェディングドレス(作者は女性2名ですがこれでレズだったらシャレきいてるな)とか、ジェラムの鳥インフルエンザ菌をマグカップ大のガラス美術にしちゃったやつはきれいですし、ビョンホの老いたり若返ったりする彫像とか、あとミもフタもないのがジルバルビエの老いたアメコミヒーローたちが老人ホームとおぼしき場所でヨボヨボ過ごしてる場面を実物大で再現したジオラマ(つーの?)がけっこう人気あった。超能力なくてもあの格好をしなきゃならないってなんかたいへんだな…。スーパマンが歩行補助器具でなんとか立ってたり、体が伸び縮みする人がのびたまま戻らなくなって惚けてたり、シワシワのキャットウーマンの肌に赤い斑点がでてたりしますよ。つーか老いたヒーローの足もとにポンニの新聞とか本を置くのはリアルすぎるのでやめてよ!!車椅子ハルク(変身後のちぎれた服をまんま着させとくのはどう考えても虐待だよ!!)の足もとの読売新聞はまだしも上野千鶴子のおひとりさま老後本とかすごくリアルでいいかげんにしてください。最後のほうのインスタっつーか、ガチな遺伝子操作系の美術家のヒトはマジすげえなあ。ほんとかどうかイマイチわかりづらいところが玉に傷かしら。もう芸術という名の神に魂を売ったんだから堂々と「作品」だせばいいのに。医術は見世物が原点なんだし。ハーゲンスの3ミリくらいの人体スライスもよかったなあ。ほかにはノーベル賞通知電報がなんか昔なつかしいコラージュ脅迫状じみててよかったのと、リンデルの人間思考図はちょっとイメルダ哲学ちっくだったですし、3-12のトヨタ連携どうのの脳波駆動式電動車椅子は大真面目なモノなのにこうして過去のいかがわしいモノといっしょくたに展示されてしまうのですね…。あそうそう、写真作品では越智一格の奇形写真(どうぞ)の原版のごく一部も展示されてますし、奇形じみた生物をもってうろたえてるふうな手術室の様子を写したピッチーニのクリーチャー物語写真とか、シェルスさんの生前没後写真はふつうにきれいだった。なんか死直後の顔って生前より皺がへってるような気もしたし、表情は写真とかで目が半開きの状態で写っちゃうあの顔つきに似てる気がした。無意識だからおなじふうにみえるのか。うたたねしてるふうというか。
ぜんたい死や肉体は今もむかしも売り物です。という真実があぶりだされるよい展示でした。それと手間のかかる印刷術は現代の印刷なんかよりもずっと鮮やか(特にリトとかは塗ったばかりの原画のような風合いだし)で劣化もしにくいという事実がまざまざと。今回の日記は作品リストに書き込みしたからできたもので、ほしい人はアグレッシブにもらうが吉。入り口受付で作品リストくださいというともらえるます。いわないともらえません。

上記画像はとりあえず死関連てことでまなさん経由の犬神家比較頁さんからの抜粋ブツ。数があるだけで風物詩的なものにも思えてくるなあ。あと奇形写真検索してたらこんなとこでてきた。