北欧の森ハンパない暗い

北欧の神秘ーノルウェースウェーデンフィンランドの絵画(SOMPO美術館)みてきまして、展示の最初のほうは北欧各国の風景画が並んでるんですけど、曇って暗い中で何かがぼんやり光ってるふうな傾向の絵が多かった。6のエークマンの描いたイルマタルは「カレワラ」に登場する大気の乙女で「原初の海に降りたイルマタルが波風と交わり身ごもる場面で、彼女の懐妊を機に世界の創造がはじまったとされる」とのことで闇に包まれた海の波間に寄り添うように浸かる女性がぼんやり光ってるものだし、7のマルムストゥルムの「踊る妖精たち」も闇夜の野原で幾人もの人型の妖精が白いもや然として折り重なるように弧を描いて光り輝いてる。11のファーンライの「旅人のいる風景」はちょっとフリードリヒの雲海の上の旅人ちっくですな。暗い中の絵では31のブロムステッドの「初雪」、水辺に浮かぶヨットの絵なんですけど、全面灰色で寒そうすぎる。27のエングベリ「湖上の雪解け」もお題が春なのに超暗い絵だし。こういう感じで北欧のどんより曇った光景が圧倒的に多いんですけど、これらの雲が晴れた時に描いたと思しき絵も結構あって、17のクレーゲル「ヴァールバリのホステン丘II」で描かれた青空とか超きれい。青がきれいといえば32のブロムステッドの「冬の日」(下記画像)、海の青がすごーいきれいだった。

晴れたときの空や海の青色のきれいさだけでなく、アストルプの20「ジギタリス」、25「ユルステルの春の夜」なんかは花や動物が画面いっぱいに描かれてて楽園のようだよ。北欧の絵はなんだか曇ってる時の暗さと、それが晴れた時の色彩の爆発っぷりの落差がすごい。北欧の風景画の章が終わると次はお待ちかね北欧神話が題材の絵が中心的に展示されてる章が始まるんですが、やはり35、36、37のキッテルセンの絵がいいですな。この展の広告にも使われてる37の「トロルのシラミ取りをする姫」、ぼんやり灯りがともる暗い屋内でもさもさした巨大なモノと人間の姫さまが向き合ってるものなんですが、この「暗いなかでぼんやり光る」「巨大なもさもさと姫」感、ヨン・バウエルの挿絵を思い出さずにいられない。キッテルセンが来ててなぜバウエルが来ないんだ。暗い屋内でぬくぬくしてる感とゆうのは北欧の方にとっては馴染みぶかい感覚なんでしょうかね。下記画像はキッテルセンの35「アスケラッドとオオカミ」。暗い森のなかで狼の目だけが光っている。

暗い森の中でぼんやり光が灯ってる感は以下43のヴァーレンショル「森の中の逃避」も顕著。

それと46のマルムストゥルム「フリチョフの誘惑」という絵、「闇に包まれた黒色の森で戦士フリチョフが眠る王と共にいる場面を描いている」とのことで下記画像

王様がフリチョフの腿を枕がわりにしてるけど、どういう話なんですかね?なんでこうなった?この絵は現物見ると予想以上に暗いので、北欧の森の暗さを描いてる系として取り上げずにいられんかった。神話がお題の章にあった絵では38、39、40、41、45のムンテの絵なんですけど、以下ちょっと並べてみる。

このガーラル・ムンテの絵柄さ、どう考えてもウィーン分離派に影響受けすぎてると思うんだが。同時期だからありえない話ではないし。分離派のほうが北欧画に影響されたのかな?どっちなんだろう。装飾感とか絵のまわりに文字入れるところとか、どうみてもクリムトあたりの影響がすごいよね?4枚目のオーディンを描いた絵に関してはチェシュカの絵柄がよぎりまくった。展示会場の説明で頻繁に見かけたのが「パリでゴーギャンに影響受けた」「1900年前後の北欧美術は、日本の美術、とりわけ浮世絵に多大な影響を受けていた」的な文章ばかりだったんだけど、分離派の影響も絶対あると思うんだがね。この神話の章が終わると次はおもに人物画中心の「現実世界を描く」章になるんですが、この中にあったエウシェン王子の来歴が面白かった。「スウェーデン王オスカル2世の末子として生まれ、21歳で画家になる決心を」したということで、なんかちょっとターナーに似た傾向の風景画だったけど、王族が芸術家になることってあるんだね。ちょっとびっくりした。

そういえば書き忘れたけど、なんか展示会場に鳥のさえずりとかが流れてて良い演出だなーと思った。下記画像は撮ったもののどこに挿入したらいいやらわからなくなってしまったものです。