新人作家が同じ内容のものを書いても、1万部も売れないだろう

本日題はhonnohonnoさんのムラ上本感想文からの抜粋。新人作家が同じ内容のものを書いてもうんぬんのくだりはいくら含蓄深いセリフを乞食のおっちゃんが言ってもだれも聞く耳もたないけれど、偉〜い学者先生がいえば数えきれないくらいの人が涙を流してありがたがると同時にサイフのヒモまでゆるんじゃうアレとおなじですな。それってなにも作家にかぎったことじゃなく、どの職種でも結局そこをめざしてるものですよねー。そんなカラッポ同然の名誉なんぞ求めてない、自分はあくまで実力とか質でうんぬんいう人もいるでしょうけど、でも名前だすだけである程度の幻想を不特定多数に抱かれるくらいにならないとどんなにいいものつくったところで売れないから食っていけないし、食っていけないと巷ではプロとは認めてもらえないし。それは大衆様がお望みの幻想をつくりだすための都合のいい道具に成り下がるってことで、それを続けてるとあたりさわりのないことしか考えつかなくなっちゃうのはしごく当然のなりゆきですな。あとアマゾンのムラ本のようすではけっこう冷静な人はいるものの狂ったようにすばらしさを訴えてる人もたくさんいるあたり、熱狂につられて買った人とかはなんというか家族全員で同じようにほめちぎってうなづきあえるような快楽を求めてのことなのかなあとちょっと思いました。おいらはといえばいまごろケッチャムさんにはまりはじめたりしています。ぜんぶ文庫でてるんでお供にできるし。はじめてよんだのがこの前でた閉店時間だったんですが、ちょっと見文体からなにから秀才臭がしてなにこのエリートが超冷静にB級ジャンル扱ってみましたみたいな!!とかプンスカしてたんですけど、なんかこう…仕事後に映画とかいく際にかなり疲れてるっつーのに電車の席がぜんぜん空いてない、みたいなとき甘ったるい夢見がちな文のものよむと殺意や憎悪がどんどん湧き出てくるんですけど、そこいくとケッチャムさんの小説はそういうときにものすごくちょうどいいんですね。こころにしっくりくる。つーかなにげにかなり勉強になる気も。こうかけばいいのかーと思う。ケッチャムといえば鬼畜鬼畜みたいにいうけど、それは話の展開上のアレであってむしろ冷徹すぎるキャラの描写がもちあじの人だと思うけどな。というわけでまあちびちびよんでますが、自分の熱狂を抑えすぎるところがちょっといまだにいけすかなかったりもします。頭よすぎなかんじ。

ところでそうだシネマベーラいこうと思ってさっき宇宙人東京に現ると昨日消えた男をみてきました。宇宙人東京に現るは真ん中に目がひとつある星形(星からきたから星型…!)のバックベアードみたいなパイラ星人さんたち(あきらかに布かぶった人)が、地球人たちにあることを教えるために海面からちょろっと出てみたり、民家の土間におじゃましたり芸能人の出し物時に舞台の袖に現れたりしてたら騒ぎになりはじめて教えるどこじゃないので、じゃあどうしましょうか…みたいに宇宙船内で知恵をだしあって、人間に化けましょうよ!おぞましいですけど!みたいになってたまたまみた芸能人女性に化けて危険物質開発中の博士の研究ノートを破りとってだめですこんなことしては!とか消えていったりして人々をなんとなく不安に陥らせているなか、かつてパイラ星を滅ぼしたというでかい太陽みたいな星が地球に向かってるということで結局博士に止めさせた危険物質を開発させることになるスジ。太陽みたいな星は近づいて来るにつれ熱いらしくて、街の人たちはうちわ片手にダレはじめます(あのころクーラーはないとしても扇風機もなかったですかね)。地球全体の危機だというのにおもに望遠鏡をのぞきつづけて大汗かいてる人周辺しか映されないのですごくスケールがちいさくみえます。最後にメデタシメデタシ感をかもしだすために子供たちに野をワーイみたいに走らせる光景とか、いろいろ牧歌的すぎな画面の映画です。昨日消えた男は貧乏浪人が高利貸しのジジイに借金返済の催促をされてて、色よい返事ができない浪人を見越してアナタの年頃の娘をカタにしてもいいんですぜ…みたいな昔ながらのいやらしい言動をねちねちとぶつけられ、そわそわする高峰秀子(ぴちぴち時代のです念のため)。この高利貸しのジジイが何者かに殺されて犯人探しがはじまるんですけど、もともとどの人が殺しててもふしぎじゃないほどほとんどの町人たちから疎まれてるもんで岡っ引きが見当違いの捜査ばかりすすめるものの、遠山の金さんがお白州で全解説するオチ。つうか真犯人がしょっぱなから出てるキャラ中の人じゃなくて途中から登場するキャラっつーのがイマイチ推理劇のカタルシスに欠けますな。あと時代的なアレでしょうがないのかもしれませんが、演出とか展開とかいろいろのどかすぎてちょっと退屈です。ギャグもトンチ的なのが多くて(江戸っ子言葉っぽいのが多くてよく聞き取れないし)笑えないしなあ。脚本と監督さんのどっちのせいかしらんけど、なんか今回みたのはどっちもいいとこの文字かぶれの坊ちゃんが頭だけで撮ったみたいな雰囲気のでした。江戸の町のリアルなたたずまいは今じゃできなそうな雰囲気でよかったですけども。あのさむいギャグでも当時は大爆笑だったんだろうか。

あとおかげさまでいやな予感の件はなんとなしに原因がわかりました。