あのベーコン彫像展示したらいいのになあ

昨日はザ・スピリット(新宿ミラノ)→アイカムウィズザレイン(武蔵野館)→チョコレートファイター(ピカデリー)→バッドバイオロジー(渋谷。えぬ)とみまして、噂のムラタク映画はふつうにいいトランアンユン映画です。懸念していた演技もわりと自然にこなしてたし。国外のいい監督さんたちにもまれればよくなるみたいですな。巨大製薬会社の御曹司のムラタクがミンダナオ島でボランティア活動してたら消息不明になっちゃったので、父親である製薬会社社長が元デカのハートネットに息子のムラタクを探し出すよう依頼してきてまああちこちいくうちに香港マフィアのイビョンホンとムラタクが絡んだり、つー話で、ムラタクはもとはふつうの人だったんですけど、ある出来事を境に人の苦しみ(肉体・精神問わず)を吸収してしまえる能力をもってしまい、以来苦しんでる人の原因となってる病気やけがをそっくり吸い取ってしまってのたうち回って傷つき苦しみつつも、救いを求めて群がってくる人々の苦痛を無償で一身に引き受けつづけている。この時点でムラタクはミンダナオを追われて香港にいて、即席の掘建て小屋にいるんですけど、この小屋のそばに突然車がやってきて運転手が血まみれ虫の息で、ムラタク助けようとするも運転手は死んでしまう。後部座席には女の人がいたので小屋に連れ帰るも、この人が重度のヤク中でムラタクは介抱してどうにかヤク抜けさせる。正気にもどった女の人はムラタクの神っぽい能力に感銘を受けつつもとりあえず帰る。この女の人はビョンホンの彼女で、ここまできた際もなんかテンパった部下にさらわれた形だったんですけど、女の人が帰ってきたあと差し入れもってムラタクのとこに通うのを知ったビョンホンがブチきれてムラタクに暴行を働くも、ビョンホンの手をつかんだムラタクがビョンホンの抱いてる恐怖を読んで神っぽいこというので、逆上したビョンホンがムラタクを木に打ち付けるなどします。要所要所にキリストっぽい要素がちりばめられてる苦しみを与える者と与えられる者の物語なんですけど、でもさー、苦しみは程度関係なくその人固有の経験で財産でもあるんで、それを頼まれたからとはいえ全部吸い取っちゃうのはちょっと神の行いとは言えない気もするけどな。それを消さずに共有してわかちあうとか、現実的な治療への努力を促したり治すためのヒントをあげるならわかるんですけど、それを全部引き受けて相手から苦痛を根こそぎなくしてしまうっていうのはなんかなあ…。苦しいことっていやだけど、その苦しみがあるからこそ生み出されるものもたくさんあってさ。たとえば医術や薬なんかはまんまだし、他人の気持ちを考えない人は精神的な苦しみを味わってはじめて思いやるということを知ったりするかもしれない。精神的な面ではつらい記憶や苦しい記憶があったとしても、それ全部消されんのってなにげにヤじゃね。あるいは重度の障害や病気であって余命があまりなかったりした場合にはもはや絶望しかそこにはないかもしれないけれど、それはそれで貴重な経験だから他人が奪ったりしてはいけないと思う(治すなという意味ではないです念のため)。劇中でムラタク探しをしてるハートネットは過去に芸術家を名乗る殺人鬼を殺した経験があって、この芸術家がベーコンの絵を殺した人の生身の肉体を使って再現してる人(オリジナリティのなさという点では芸術家というより強迫的ベーコンマニアってかんじだけどな)なんですけど、このベーコンマニアの人に呼びつけられたハートネットはバットでボカスカ殴られた上二の腕に噛み付かれたりした挙げ句、突然ベーコンマニアの人がキリストの苦しみは終末までつづくんだよ…とか感傷的になりはじめたところで弾丸ブチ込むとありがとう…とかいって台座の上までいって最後までかっこつけながら死んでいくというアレだったんですけど、ハートネットがムラタク捜査の途中ことあるごとにこのベーコンマニアの人のことをなんだか思い出しまくるものです。なにしろトランアンユンはムラタクの使い方をちゃんと心得ててさすがだなーと思った。男にしては華奢な体つきな上女っぽい顔立ちのアイドルを痛めつけられる役柄として使うのは非常に正しいと思います。ファンの女どもも満足するだろうし。ポンニ国内ではああいうことは怖がってだれもできないでしょうな。恒例のウジうねうねもちゃんとあって、やっぱ俳優を作品のために平然とひどい目にあわすことのできる監督さんはすべからく名手だなーとしみじみ思いました。ジョニートーといいピンゲーオといい。ピンゲーオさんといえばチョコレートファイターは近年まれにみるたいへん面白い映画でして、宣伝で全面にだされてる格闘ももちろんすごいんですけど、そういう能力をもつ理由や背景がちゃんとしてたんでみごたえがあった。なんの映画みるか迷ってる人はとりあえずチョコファイにしとけと声を大にして言います。とりあえずタイにきたヤクザ幹部の阿部寛が、現地マフィアのシマ荒らしたということですごんだり詫びいれたりしてその場は収まるものの、現地マフィアのボスの目の上に傷のある女にホレてしまってこっそりお付き合いをするうち女の人が妊娠し、駆け落ち同然にマフィアから抜け出たものの女の人は阿部ちゃんの身の上を気づかって帰国させ、生まれた子をひとりで育てる。この子供が女の子(ゼン)で、生まれつき知的障害があるんですけど、引っ越した先にムエタイ教室があったりテレビ映画でハードな格闘技モノをみるうちに生まれもった才能がだんだんでてきて、どんな場所からなにかを投げられても即座に掴むことができるという能力をみた同居人(路上でいじめられてた孤児で、ゼンの母親が保護していっしょに暮らしてる)のデブ少年が路上でこの芸をみせて小銭稼ぐことを思いついてやるとなかなかいける。意地の悪い連中にからまれてもゼンが追い返しちゃう。そうこうするうちに母親が重病にかかっていることがわかり、治すための薬は高価で手に入らないため、母親が家に帰ってこなくて泣き叫ぶゼンをなだめつつ、母親の貸し出し帳簿を発見したデブ少年がそうだ借金回収すればいいんだ!とばかりにゼンといっしょに貸し出し先に催促へいくもことごとく追い返される。その晩ある夢をみたゼンが、突然起き上がって母親の金貸し出し先である氷屋にとびこんでゆく…。そんなこんなで母親の薬代ほしさにゼンとデブ少年があらゆる貸し出し先で金をせびっては拒否されて腕っ節で払わせる展開で、とりあえず最初の氷屋さんをはじめ肉の加工業者だのダンボール置いてるとこだのそれぞれいろんな特色のある場所で戦いを繰り広げるわけです。カネ借りてる業者たちも返すよりも殺す!みたいな姿勢で皆さん一貫してて、従業員さんたちもカネ奪われたら給料天引きするぞ!とかいわれて全力でゼンとデブ少年に襲いかかってくるもので始末が悪い。業者さんごとに襲う際に使う道具がちがってバラエティゆたかな戦闘シーンが目にたのしいものです。ギリギリで死んでないカンジのスリリングさもナイスですし。ゼンちゃんは知的障害者だけにリミッターがもとからないかのような縦横無尽な戦いかたなとこがすばらしい。いちど戦いだしたら攻撃の手を一瞬もゆるめない畳み掛けな進行で。クライマックスにでてくる同じ知的障害をもってると思しきジャージ少年(かなり強い)のブキミな動きもおもしろいですし。なにしろそういう激しい戦いとエモーショナル克つ厳しい現実とがちゃんと地続きになってるしっかりしたつくりなのが大満足のゆえんですな。石井輝男頃の日本映画をみたかのような娯楽感で必見すぎです。
バッドバイオロジーは生まれながらにクリトリスをたくさん持ってる写真家の女の人がいて、夜な夜なクリトリス過多からくる異常性欲を満たすためにてきとうな男をつかまえてはヤってるんですけど、中出しされると即孕んじゃう特異体質で、でもそんな即席妊娠で生まれるのは当然奇形児なのでヤルたんびに生み捨てしつづけてて、ヤった相手の男も激しすぎる性行為や激しすぎる感情の起伏によってだいたい死んでるんですけど、ある日スタジオとして選んだ家の人が暴れる巨大チンコをもっていることを知って、やっとアタシにも人生の春がー!とばかりに勝手にウキウキしてヤる気マンマンで巨大チンコの人んちにいったところ、巨大チンコの持ち主の男の人がうなだれながらチンコどっかいっちゃったという。そんなー!とか慌てるクリトリス過多の女。そのころ自由になった巨大チンコは家の壁を突き破って手当たり次第に女を犯しまくってたんですけど、さんざんしたあと元巨大チンコ主の人んちにいるクリトリス過多の女の人がいるところにカスカスになった状態で戻ってくる。死んじゃだめー!とばかりにそこらへんにあったステロイド注射を虫の息の巨大チンコに打ちまくるクリトリス過多の女。なんかへんな色になりつつもだんだん元気になってきた巨大チンコをみて恐れをなして腰を抜かすクリトリス過多の女。いっぽう元巨大チンコ主は間接的にチンコに打たれた薬品が伝わってるらしくて泡ふいて気絶している。クリトリス過多の女に巨大チンコが襲いかかり、最初はおびえていたクリトリス過多の女もその快感に天国や地獄や破滅や再生やらいろいろみえてきて、神に感謝しつつなにかを産み落とす。なんというか、この主人公の女性は自分がはた迷惑な体質なことで神を恨んだりするものの、それによって得る快楽によって神に感謝するようになって自分の特異体質は神々しいものかのように思い始めるんですけど、最後に産み落とされた物体がものすごいくだらんアレなところがとてもよかったです。
スピリットは…いろいろセリフで説明しすぎなとこがぶちこわしだと思った。原作が凄いということで柳下さんがパンフで熱く書いてたりもしていますが、正直この映画はつまらん。みてる最中も席立つ人がけっこう多かった。映画はロドリゲスにまかしときゃいいのに。漫画家さんが映画やるとろくでもなくなる場合が多い気もするだけに。

なにげにこの日みたのが生まれながらの障害(奇形)と才能についての作品ばっかだったな。ほとんど面白かったから頭も痛くならなかった。いつもこうならいいのにな。