アメリカだと異物として好奇の目にさらされたうえ好事家に監禁とかの展開になりそう>空気人形

『10年ほど前にLAタイムズに小さなトピックスが掲載されていました。それもたった1行。"ある恥ずかしがりやの日本人が、毎夜好きな女性の部屋に侵入し、彼女には何もせず夜を明かしていた。"「世界の珍事件」といったコーナーで紹介されていたエピソードでした。その時、この人は彼女の部屋で何をしていたのか?そもそもどんな人なのか?等、数々の疑問がわきおこりました。』

昨日はバタフライエフェクト3(シネパトス)→アンナと過ごした四日間(イメージフォーラム)→空気人形(シネマライズ)で、上記『』内はアンナと過ごした四日間パンフの監督さん談のモノです。アンナと過ごした四日間は引っ込み思案な性格なゆえに損な役回りばかりしてきたうだつのあがらない中年男が、たまたま遭遇したレイプ現場の被害者女性に惹かれて以来女性宅を双眼鏡で覗きつつ、女性の生活サイクルを覚えた上で粉末状にした睡眠薬を砂糖の瓶に混入させ、睡眠時に目を覚まさせないように念入りに準備した上で毎晩女性宅へ忍び込んでは足の爪に紅を点したり指輪をはめたりとひかえめな凌辱行為に及ぶアレ。中年男が熱あげてる女性がとんでもない美人とかだと想いがかなわないほうが自然なカンジになっちゃうものですけど、なんかこの作品では妄執対象である女性が主人公の中年男と釣り合いがとれた感じの風貌で見た目上はすごくお似合いのふたりなんですが、女性の意志をないがしろにして好き勝手犯罪行為に及ばれたことによる不快感が原因で超えられない壁ができてしまうラストがなんとももの悲しい。なんとゆうか「あのひとといっしょになったらあ〜んなことしてこ〜んなことしてウッヒヒヒ〜」な妄想実行はいくら穏やかな行為でも自己愛オナニーでしかないので嫌われますよ、愛は相手との意志疎通でしか育まれませんよ、先走り汁だけではなにも成しませんよ、という一方通行完結しがちなおとこの身勝手を諌める系の物語っつーか。でもヤッた男のほうがありえないイケメンとかならいかな犯罪行為されてもおんなのほうは悪い気はしないんだろうけどな。今作では被害者になる女のほうがたいした風体じゃないわりにみょうに身持ちが堅そうで、そんなに引っ込み思案すぎると襲われたりしねーかぎりいつまでたっても彼氏できねーぞ!みたいな監督さんのメッセージが微妙にこもってるような気もした。あとこの監督さん作ははじめて見ましたが、背景音を効果的に使う(主人公が寝てる女性の体に触れようとするところで犬の鳴き声が遠くでしたりパトカーのサイレンの音がしたり。これみよがしな効果音じゃなく、環境音が偶然かぶったみたいなしぜん演出が巧い)し飽きさせない画面づくり(回想シーンを突然挿入してちょっとしたショック演出)しててなんか信頼できるなーと思いました。もっと意味不明のアートっぽい人かと思い込んでましたけどぜんぜんわかりやすい娯楽シュルレアリストですき。
空気人形は魂をもったダッチワイフが持ち主が働きにでてる間に外出してフラついたりビデオ屋でバイトしたりするうちに人間に憧れてまねごとをしてみるも結局人形でしかなかった、みたいなかわいそうな話。なんか会社の近所がでてきてそういえば撮影してたっけな〜とか思いました(あすことは別につい最近会社の裏のほうにある黒いビル全部使って中国人らしき人たちが大掛かりな撮影してて主演俳優とおぼしき端正なマスクの男ふたりが街道側に向けられた椅子[もっと休めるとこにしてやれよ…と思った]に座ってきまり悪そうに下向いてた)。「自分の理想とする幸せ」をジオラマよろしく再現することでどうにか精神の均衡を保って暮らしてるうだつのあがらん男が魂をもってしまうダッチワイフの持ち主なんですが、「自分の思い通りにすること」は自分が愛しいだけで相手はいらないと同義なので意志をもったダッチワイフは当然逃げてくわけですけども、バイト先のやさしい男も実は元カノをダッチワイフに投影してるふうなことが描かれる。この前のミレー画回でダリが「晩鐘」に自身の出生後の苦悶(ダリが生まれる前に死んだ長男につけられてたサルバドールという名前がそのままつけられたことから、両親は自分自身ではなく自分を通して死んだ長男を愛していたのだ、自分は愛されていないのだという愛情飢餓・孤独・恐怖感トラウマ)を投影して怯えた件やってましたけど、人は愛を欲する対象からの愛の不在に意志ではどうにもならないほどに生を左右されてしまうものなんだなー…とぼんやり思った。空気人形では魂をもったダッチワイフはそれを自覚してて、だれかに抱かれるたびにワタシは代用品…だれかの代わり…ていう心のつぶやきが挿入されますけど、代用品ていう意識を捨てないと代用品じゃなくなったときに生きていけないよ、ということなんすかね。ダッチワイフ側だけじゃなくそれを使う男についても、人を「誰かの代わり」に扱うことはオナニーと同じでいずれ破綻するよ、みたいな。
バタフライエフェクト3は意外にもこわい子映画だった。こわい子物語的にはバタフラ3→エスター→ちいさな悪の華の順でみるとこどもこわいがいいかんじに増すと思う。特にバタフラ3とエスターはどういうわけか火事設定で共通してるし。しかし生まれ変わっても異常人格っていろいろ悲惨な気も。なんか最近のハリウッドのホラーもののネタってポンニのエロ漫画風の設定なこと多くね?いいですけどさ。ベタで笑えるし。ちなみにバタフラシリーズは今回はじめて鑑賞で今までやったやつはさっぱりしりません。