CMで吹替声でゆってる「わかったぞ…!」みたいなセリフはさっぱり関係ねーし

昨日は月に囚われた男(ガーデンシネマ)→第9地区(丸ピカ)→シャッターアイランド(日劇)とみまして、月に囚われた男は傑作。第9地区も前評判に違わずおもしろかったんですけど、月に囚われた男の傑作っぷりにかすんでしまって「まーよく出来てたなー」みたいな感想しか抱けなくなってしまいました。どちらもまだみてない方は別々の日にみるか、同じ日にみるんなら月に囚われた男はあとまわしにしたほうが吉。先にみるとその後にみる作品がどんなもんでもかすむ。第9地区をみて狂い咲きサンダーロードがよぎった方がいたそうですが、おいら的には月に囚われた男のラストのほうが狂い咲きサンダーロード感タップシで嗚咽がでそうなほど泣いてしまいました。人生で泣いたダントツ映画柔道龍虎房に次ぐ滂沱作品確定です。狂い咲き感でちょっと劣る原因として第9地区の主人公にあたるヴィカスさんがちょっと小ズルいキャラっつーか、被害者のエビ星人さんを見捨てて自分だけ助かろうとしたシーンがクライマックスの乗り込みロボのくだりまで何回かあったでしょ?なのでヒドイ目に遭っても自業自得感があって悲惨さにはちょっと欠けるきらいがあるっつーのかな…なので反撃に転じた際のカタルシスがちょっと微妙っつーか(だからこそ逆襲に転じる背水の心理状態がすごくリアルでもあるんですけども)。残虐兵士を撃破する際の1発こっぱみじん描写も残酷通り越してまんがちっくで、物語の流れの上でのカタルシスよりもむしろ地球人とエビ星人間におけるいろんな落差をあらわす装置としてやってるふうだったし。月に囚われた男ではラストで狂い咲きする男は道徳的な落ち度はひとつもない、ナチュラルボーン被害者ですので、主人公に対して仕組まれたいろんな謀略があきらかになるにつれて心が痛んでく度が上乗せされてって、あげくにクライマックスの狂い咲き展開なわけですよ。並びにすわってたモヒカンパンク青年ですら泣いていましたよ。こんだけ男客ばっかで鼻すする音が客席のあちこちからしてきた映画ってここ数年ではマジにめずらしいと思う。この傑作に敬意を表する意味でもネタバレは極力したくないんですが、ちょっと書かずにいれないのでこれからみる気の方は以下の文は読まないようにお願いします。観終えた直後の感想として「ガーティをつくった人がいいひとだったんだなー」と思いました。おそらく月掘削計画でクローン人間をつかうという方向を知らされた際に、そのクローンを会社は安上がりの家畜程度にしか思っていなかったのに対して、ガーティをつくった人は月基地で叶わぬ望みを抱きながらも永遠にひとりきりで生かされつづけるという地獄のような苦しみを課すことに良心の呵責をもっていた=クローンであろうと自分となんら変わらない人間として考えていたのだろうなあと思った。だからこそやりようによってはいくらでも反撃のできる仕組みをガーティに託しておいた。会社にはもちろんそれと知られないように。ラストの輸送ポッドが地球にむかうシーンで両手をあげてガッツポーズ決めたかったですよマジ。なにもないと思っているところに実は人の深い思惑が潜んでいる、というあたりは芸術作品に込められたたくらみにも似てじーんとしました。監督さんはデイヴィッドボウイの息子さんだそうで、ツラはさっぱりオヤジ似ではないもののなんかいろいろイカスものを受け継いだっぽい。むかしながらのハリボテ感あふれる造形の機器類とかもイカス。古くさいのになぜかかえってリアルなかんじ。しかし長期間の孤独作業の閉塞感をかもしだすためとはいえ、基地で過ごす人間を快適にするための施設や道具がはた目からしても乏しくて(月で掘削できるくらい技術があるのにどーして観賞用のテレビ画面があんなちっちぇのよーかわいそうだよーしかもなぜか白黒だしー)、会社側はクローンのことをマジにヒトとは思ってなかったんだなーという雇用者側の鬼畜感がひしひしと伝わってきます。なんというかブレードランナーでのレプリカントの独白を思い起こさせる、被抑圧者の闘いの映画でした。必見。2010年のスクリーンでみないと損作品。
第9地区はそこらでエビエビ出てますし、パンフで滝本さんも書いてます(ついった場所わからん)のでいまさら書くのもアレですが、ある日とつぜん南アフリカ上空にでかいUFOがあらわれた上じーっと止まってるんで、むりやり入ってってみたらどかした岩の下からでてきた虫みたいな気色悪い物体がウジャウジャいて、なんかクチがモジャモジャしててハエ人類というかエビ人間っぽいんですけど、技術だけは何世紀か先みたいなずば抜けたモノつくれるのにも関わらずなんか頭悪くて(つーか性格が穏やか)、とりあえず上にいられても不安なんで南アに難民キャンプみたいのつくってそこへ全員おしこめてあるっつー話なんですけど、ちょっと頭悪いっぽいのをいいことに南ア政府の役人に日常的に痛めつけられてたり、ギャングからはメシのタネにされたりとさんざん迫害されてるわけです。この話の主人公がエビ星人たちに横暴にふるまう役人のヴィカスさんなんですが、ある日査察に入ったエビ星人のアジトでみつけた薬品的なモノを顔面に浴びたらあらたいへん、自分の腕が日頃迫害してるエビ星人の腕的なブツに変化したではないですか!これは貴重な標本だ!数百億だ!とばかりに国家機関のヒトが総出でつかまえにくるわ、巷では嘘報道されて追い回されるわと這々の体でエビ星人隔離地区へと逃げ込んだところで知的なエビ親子と出会い、人体のエビ星人化を止める方法と、エビ星人親子が母星へ帰る計画を練っていることを知り…みたいなスジ。早い話はさんざんユダヤ人を痛めつけてたナチの人がある日突然ユダヤ人になっちゃった的なお話です。エビ星人化しつつある主人公は遺伝子認証型のエビ星人兵器を使えるようになってるので、ありえない破壊力を誇る的なスゲー武器をガンガン発砲する戦闘シーンが後半でガッチリ繰り広げられるわけです。ものがたりを追う辛抱すらないゆとり脳とおぼしきカッポー連中(*男含む←コイツらバッカじゃねーの)が前半のアクション要素のない説明的展開らへんでしきりにため息をついていましたが、後半の戦闘シーンみるだけでもこの作品をみにいく価値がぜんぜんあります。あの諷刺的な運びすら楽しめない幼児的心理状態で結婚して1年でも辛抱できんのかねえ。

シャッターアイランドは推理モノじゃなくね。そもそも主要キャラのセリフが長過ぎる時点でなんかもうフラグ立ちまくりだよなあ。犯人はひとこと多くなっちゃう件はコロンボ以下ガチだし。つーかデカプーはどんな役ならいいんでしょうねー。男くさいのに出まくってるところからして当人的にはそうゆう俳優として確立したいんでしょうけど、なんかどれも同じキャラにみえてしまっている気も。実はラブコメとかのが見栄え的に映えたりしてな。わからんけど。

第9地区のパンフは評論がいくつものっててみるからにお買い得でしたが、シャッターアイランドのは評論がひとつものっていなかったので買わなかった。スコセッシで大作ってのをいいことになまけてやがんな。精神科医評くらいのせろよ。月に囚われた男パンフはもうちと幾人かの評がよみたかった。傑作だけにかるいつくりがもったいない。