ヒドいとこにはヒドいヒト、エロいとこにはエロいヒト

昨日仕事後にしねでクロッシングをみてきましたが、ギアひとりが生き残ったところからしてつまり「正義の味方行為は定年退職後にね=稼ぎと正義は切り離せ」ことなの?物語としては家族愛を貫き通したいがために現職刑事でありながら犯罪に手を染めてゆくイーサンホークと、長年にわたって潜入捜査を続けるうちに黒人ギャングたちの堅い絆に感化されつつ警官の下劣さを嫌というほど目の当たりにして判断基準がぐらつきつつあるドンチードルと、退職金ほしさに定年日まで事なかれ主義を貫き通そうとしてるリチャードギアという同じ警察署内に勤める3者の数週間を追うものですけど、3人は元々同じくらい善人だったっぽいんですが、現状よりも上のモノを求めるあまりにどんどんこじれて引き返せないところまでいってしまう。イーサンホークは奥さん子供と暮らしてるんですけど、なんか子供がやたらにいる(無軌道な中出しで鬱屈はらしてたんでしょうね)上さらに奥さんのお腹に双子がおさまってる中のありさまで、それに加えて家屋の素材が劣悪とかで奥さんがカビ吸って病気悪化中というデッドor引っ越し状態のためにイーサンホークは大きめの家への引っ越しを標榜してるんですが、ポリの薄給では大邸宅購入に際する前金すらもおぼつかないわけです。で、愛する家族のためにカネ集めにがむしゃらになりすぎるあまりに「神様たすけて!!」とか言いながらそこらの犯罪者をてきとうにブチ殺して稼ぎを奪ってまわっている。そこで生まれ持ってる性質がワルだったならどうってことなく過ごしちゃうと思うんですけど、ハンパに正義漢なもんで追い剥ぎ殺人してるのがうしろめたいやらカネ集めなきゃ家族の命が危険だわで始終イライラしながら青白い顔でうつむいてそわそわしてる爆発寸前の神経症患者のようなイーサンホーク。一方ドンチードルは職業柄備わった豪腕と情に厚い性質をフル発揮してギャングの中では一目置かれていて、なかでも懐の深いギャングの元ボス(刑期を勤め上げて出所してきた)とは互いに親友ともいえるほどの間柄になってしまってるんですが、警察側が悪いふうにしかみえなくなるほど肩入れしすぎなことを自分でも不安に思っていて、すっぱり潜入捜査をやめてポリ仕事にもどるために上司(←この俳優さんがチードルの命が関わった大事な話をしてるというのに常にニヤついた顔つきしてて腹立たしさが倍増するナイスキャラ)に昇進を掛け合うんですけど、出所した元ボスをお縄にすることを昇進の条件として提示されてチードルが苦悩するっつー。そもそもが「悪」を挙げてメシのタネにするための仕事をしてるにも関わらず「悪」側に感情移入してしまっているあたり、イーサンホークと同じくチードルもハンパに善人がゆえに血迷ってしまっているのですね。ふたりともけじめつける箇所を間違い続けていらんほうの「善」にすがりつきながらドツボにハマってゆく。ちょっとボタンを掛け違えるだけで「警察は『悪』とする者を食い扶持にしている機関である=警察はゴロツキの巣窟である」という事実がえげつなく描写できてしまうものなんだなー。カネにこまったイーサンホークが同僚よんで自分ちの地下室で賭けトランプやるシーンがあるんですけど(もちろんイーサンホーク負ける)、そこでのやりとりとか完全にたちの悪いゴロツキでしかないし。あそうそう、あとチードルが潜入してるギャングが黒人さんのなんですけど、監督さんも黒人さんなせいかなんかやたらに描写がリアルなような。 麻薬仕分けした後とかことあるごとにゲームやろうぜ!みたいにしてたし、かつてストリートには仲間がひしめいていて何でも対面して交渉してたんだ…ところが今はみんなゲームやるためにストリートからいなくなっちまって…みたいに元ボスがボヤいてたり、なんか黒人ギャングの方たちは基本的にゲームが大好きなんですかね。チードルと元ボスが再会した際のやりとりとか超スリリングだったな。黒人さんはいつもあんなんやってんの?超カッケエ。元ボス役のスナイプスも盛り過ぎの貫禄的な風体がピッタシだし。もどしますが、イーサンホークやドンチードルのようなアグレッシブさと対極キャラなのがリチャードギアで、あと数日で定年退職なもんで厄介ごとから耳目ふさぐ態勢に磨きがかかってて、たとえ研修で新人がつけられても「なにもするな」の1点張りで軍あがりで体力のあり余った新人から白い目でみられる始末にも関わらず、なにがおきてもてきとうにやり過ごして退職目前になったとき、押し付けられた新人の殉死や自分の監督不行き届きで新人がへまをしたにも関わらず結果的にお手柄ということにされかかってしまい、ギアはもう終わることのない犯罪がらみ―その善悪のどちらであろうといっさい関わりたくはないのに、最後の最後で耳目ふさいだがゆえに偽善者となって退職してゆくことになってしまう。ギアはいつもお世話になってる売春婦(客を「パパ」と呼ぶプレイしてんですけど近親相姦プレイ専門てことなの?)に想いをよせていて、退職後に売春婦のヒトのとこへプロポーズにいくんですけど、売春婦さんはギアを客としてしかみてないので断られる。ギアは「警察=偽物、彼女との結婚=真実」という認識のもと、彼女といっしょになるために勤続数十年の職場で職務放棄してまで退職金を得ようとしてたんでしょうけど、彼女との結婚自体が幻だったことに警察官の仕事という真実を失ってから気づくんですね。で、もうなにもなくなったギアが自殺しようと銃を手にとると失踪届けが出てた女性が目前で何者かに連行されてゆくところを目撃して…て展開。パンフで高橋さんがギアにとって残酷な幕切れだと書いてたけど、おいらはそうは思わなかったけどなあ。これは自警団としてイキイキした老後をおくるんですね!てガッツポーズでしたけどね。最後に映るギアのツラもそれまでで1番キリッとしてたし。ジャッカルではIRA闘士にしてはヘタレすぎてそぐわなかったけど、今回みたいな元からヘタレ的なのがブルブル頑張るふうな役はピッタシだったなあ。配役のピッタシさではチードルが昇進を掛け合う女上司のイヤミったらしいカンジもすんごいよかった。現場をすこしも勘案せずに昇進や力関係しか考えない酷薄な女上司のトシくって化粧が肌にのってない乾いたカンジ。監督さんのキャスティングセンスすごい。物語上で必要な各々の盛り上げ箇所をあますところなく体現するヒトをキチッと配置してある。あとなぜか亀に夢中なイーサンホークの息子さんたちもなんかよかった。