鬼畜について無知なヒトほど鬼畜化していて気づかない件

『驚いたことに「自力で生きていけない人達を国や政府が助けるべきだ」という問いにNOと答えた人の割合は、日本が世界一。アメリカの28%に対して、日本は38%になっているという。世界平均は10%に満たないのに。
 日本という監獄の中で、負け組は自己責任だという役割分担を信じ込まされ、毎年3万人以上の人が死んでいるのに、それでも助けないのが正義だという行動がやめられない。
 ミルグラムの実験やスタンフォード実験を笑えない自分を本作の中で見ることができれば多少は、正気や、人への優しい心が取り戻せるかもしれない。』

ベストセラー(8日。ヒューマントラストシネマ渋谷)→エクスペリメント(10日)→愛のむきだし(12日。真文芸坐)とみまして、上記『』内はエクスペリメントのパンフの和田秀樹さん文より抜粋したモノ。スジとしては1日10万円もらえる政府系組織主催の研究実験体募集に集まってきたカネが入り用の野郎どもが、実験してるうちに人格が変わっちゃうっつーアレでなんか実際にあったけどマジヤバくてなくしたとかなんとか。監督さんがプリズンブレイクの主要なヒトだとかで手に汗握る展開ではあるんですけど、基本的にエイドリアンブロディの羞恥プレイ場面をたんのうする映画です。当の1日10万の実験つーのが入念な心理テストであらかじめより分けられた「囚人側」と「看守側」がルール厳守しながら2週間過ごすというモノなんですが、定められたルールをひとりでも破ったら実験は即中止されるというんでカネほしさにどうにかルールに従わせようとしているうちにどんどん軋轢が広がっていき…みたいな展開。最初のうちはみんなおとなしく役どころにおさまろうとするんですけど、日数がたつ内に囚人側と看守側それぞれに問題を起こさずにいられないような性質のヒトが巧妙に配されてることがわかってきて、たとえば主人公のブロディなんかも普段はケンカをふっかけられてさえも暴力はふるわないスタンスの穏やか青年で通ってるのに、実験中に出されたクソマズい食事を全部平らげることを強制された(「囚人は食事を残してはいけない」ルール)ことから即キレてしまって、そのときは実験中止にはならなかったんですけど、これ以上ブロディがルールを破り続けるともらえる報酬が少なくなっちゃうから、と看守側がどうにか暴力をふるわない(「暴力禁止」ルール)で囚人たちをコントロールしようと画策しはじめる。いくつかあるルールの内で「ルール違反の囚人が出た場合30分で懲罰を与える」「囚人は看守に触れてはならない」というのがあって、これを破りさえしなければ大丈夫だからと看守側が囚人に恥辱を与える方向の罰を課しはじめる。具体的には体中の毛を剃ったり、小便を数人で浴びせたり、底のほうにうんこがこびりついた(←このありさまがすごくリアルだった…)便器の水に頭を突っ込んだりといった、直接的な暴力よりもたちの悪い嫌がらせというか拷問に近い罰を与えて従わせようとするわけです。囚人側に配されたヒトたちというのがおそらく日常では「優しい人」で通っている人々で、そういう性質の人は情を尊んでいるがゆえにより義憤に駆られやすい=目先のカネよりも怒りを優先しやすく、対する看守側に配されたヒトは普段からチンピラ風味でいざとなると自分の欲望を優先しやすい性質っぽいので、そんな真逆の性質同士が抑圧的決め事の状況下で主従関係を強制されればぶつからないわけがない。なかでも看守側のメンツでいちばんひどいのがフォレストウィテカーで、このヒトは独身(たぶん童貞)で長らく強圧的な母親と二人暮らしの人生だったぽいんですけど、なんか母親に命令されっぱなしで常に小さくなりながらの生活だったらしくて、今回の実験で権力を振るう側として男たちを意のままに操ったことにえも言われぬ快楽を感じてしまったらしく、生まれてはじめて大の男を踏みにじったときに勃起していることに気づいて以来、さっそく調子コキはじめる。さも自分は強大なちからを持っているのだといわんばかりに囚人側をひどい目に遭わせ、笑みすら浮かべるウィテカー。草食系とか言われる男の正体がこの映画でしっかり描かれていますよ。「やさしい男」なんて地球上にひとりもいないんだよね。で、看守側がカネほしさに囚人側をルールに従わせるべくヒドい拷問をエスカレートさせてくんですけど、日数が経つにつれあきらかに「ルール」から逸脱してることをしてるにも関わらず、なぜか実験が中止される気配がまったくない…。ぜんたいカネというか心地いい生活を守るためならヒトは悪魔になれる、という実験なのかしら。ナチのガス室送り係も実にふつうのヒトだったらしいし。ちなみにこの実験の看守側はうまいモノも食べれるし酒も飲める状態で、体制への不満や怒りなど抱きようもないわけです。看守は囚人を理解できないし、囚人は看守を理解できない。看守側にも囚人に肩入れしようとする人がいるんですけど、たちまちバレて拷問の憂き目にあってしまう。看守側のチンピラ風味のメンツには女たらしキャラがいて、ちんぽ我慢ならんあまりに囚人側の色白のをつかまえてしゃぶらせ係にしはじめたりとヤオイ的な画ヅラもちゃんと忘れていません。囚人側キャラでは妙に収監慣れして「やれやれ。またか」みたいな風情を醸し出してる白人至上主義のクリフトンコリンズJrさんがイイ味。この実験に兵役経験者が参加できないのは忍耐を染み込まされてるからでしょうね。それだと動物的な本能を引き出す実験にならないし。


 
ほかの作品についてはたぶん明日カキます。