人生はハエタタキみたいなもんしか残らない

ナッシュビル(17日。新宿武蔵野館)はアメリカの極右的な土地柄の田舎街で繰り広げられる選挙運動に付随して披露される歌のショーのために集まってきた歌手だのゲテモノだのがモメたりモメなかったりして最後に1カ所に集まってくる話。そこらの映画では2〜3秒で済まされる日常風景を、相当数の登場人物が各々やりすごしてる場面と「ちょっといやな気分になる」ほうの歌の業界のありがち光景をとりまぜて淡々と映していってるふう。ひとつひとつの場面はとりたててどうということもないつまらん光景なんですけど、いろんなキャラのそうゆう場面を間断なくつめこんであるんで全部みおえてみるとやたらに濃縮したモノを鑑賞したような充実したきもちになる。選挙歌謡ショーはガチガチに古臭い土地柄もあって、日本でいうベタな演歌にあたるカントリー&ウエスタンな歌ばかりが歌われるんですが、そうゆう歌を歌いにやってきた歌手たちが精神的に不安定でステージで故郷のことを延々と語り始めて歌わなくなっちゃったり、純愛ソングを片思いしてる人妻にむけて真剣に歌い上げたり、ふつうに音痴なのにプロの歌手になる気マンマンなせいで恥辱にまみれたりします。ステージをみにきたお客さんのほうもすこしおかしい人だらけで、瀕死のおばあちゃんのお見舞いにきた若い娘さんの風体と言動が終始不謹慎だったり、スコットグレンが精神が不安定な女性歌手に無骨な感じで想いをよせていたり、道路では荷台からなんかおっこちたのが原因であとからきた車がころがったりぶつかったりして大渋滞になった挙げ句、車んなかのヒトビトは思い思いにのんびり過ごし始めたり、カントリー歌手を夢見るアフロおばさん(最重要キャラなので覚えておくこと)の歌手進出を阻止しようとして夫が探しまわったりしています。歌業界のいやな気分になるありがちシチュばっかと書きましたけど、なかにはちょっこし心温まる的なくだりもあって、特に人妻に激しく片思いしてる男性歌手がライブ中に彼女にむけておもいのたけをぶつけるように歌い上げるところは胸が熱くなる名場面なんですが、その後の展開のサバサバ感もくわえてなんかまあステージ裏ってあんなんなんだろーなーとあられもない感覚にとらわれもします。こうゆう光景にくわえて突撃インタビューした相手が語ってる最中だとゆうのにいつのまにかよそ見してて「キャー!あすこにいるの有名な○○さんだわー!!」とか駆けてっちゃうエンドレスな失礼きわまりないBBCの女レポーターが痛いわイラつくわの不穏キャラなんですけど、エピソードの要所要所にでてくるところもあなどれない。結末でこの作品がいったいなんなのかが映し出されるんですけど、ロバートアルトマンて監督は気の遠くなるような手間と金を惜しみなく注ぎ込んで堂々と無意味を描くヒトなんですね。クソ手間隙かけたモンティパイソンの「精子ってすばらしい」歌のシーンがよぎらずにいられるか。そしらぬふうにドブに数億つっこめる大人ってステキ!!結末までみて「なんてひどい映画なんだ…………………」と全身で感じた。ものすごい苦労して積み上げて「これはゴミクズです。」て男らしい。産業が全滅して没落したいまのアメリカを予言していますね。どこがっていわれてもわかりません。ただ思いついた。歯にはさまった食いカスを延々と100ドル紙幣の上に並べてゆく的な光景だった。放り出してるのかちゃんとやってるのかなんだかわからない。ひどいのか誠実なのかが判然としない。
尚、劇中で歌われてる歌の権利料がDVD販売しても回収があやしいくらい膨大なので、販売はあいかわらずできんそうです。膨大な情報量を扱っていながら脱力さす的なとりみきさん系の作風がツボる方ならばみたほうが吉。ただとりみきさんよりもだいぶゆるゆるな作品ですのでそうゆうアレがたのしめる方むけではある。個人的に歌のなにげなくドヘタな女性のくだりがなぜかツボった。豪華な出演者ばかりなうえ歌がメインの作品で音痴な人がわりと歌っちゃったうえ「ひっこめドヘタ!」「もうマンコみせろ!」とか罵声あびせられる場面が長々とあるってのがすごい。暴力。