明日に生きる人間が今日を生きる人間に殺される

ラビットホラー3D(19日。シネマート新宿)→世界侵略: ロサンゼルス決戦(バルト9)→アジョシ→ザ・ウォード 監禁病棟(武蔵野館)とみまして、アジョシはヤクザもんの彼氏に暴力振るわれるたびにシャブやってやりすごしてるろくでなしストリッパーの母ちゃんから逃げるように質屋のウォンビンとこに入り浸ってる少女が、母ちゃんが盗んだ麻薬がらみでヤクザもんに拉致られて臓器を取られそうになる話。この少女とウォンビンは血縁とかではないんですけどなんとなく友達なかんじで、ウォンビンはつらい過去と同じことが繰り返される事態を阻止すべく少女のゆくえを追う。主人公が追うことになるのが闇で臓器売買してるヤクザもんなんですけど、パンフには仲介とか書いてあるけど実際には拉致した幼い子供たちをヤクの受け渡しや金の引き出しなんかでさんざん酷使した挙げ句、動けなくなると臓器を売り飛ばして処分してしまうとゆう血も涙もない連中で、この冷酷きわまりないヤクザっぷりはちょっとスラムドッグミリオネアの片輪に仕立て上げた子供の物乞いを組織するインドのヤクザ的な冷血さに似通ったかんじ。この臓器売買ヤクザのメンツが全員冷血ではあるんですけど各々がみょうにキャラ立ちしてるうえ、あんまみたことない拷問(ドライヤーで拷問できるんだねえ)とかしててなんとなく心に焼き付けられる。脅し文句も「人体の神秘展に売り飛ばすぞ」(←や、やっぱりか!て思って噴いたじゃねーか)「大陸の連中ときたらオリンピックをやらんと橋や運動場をつくらない」みたいなちゅーごくを揶揄してるふうな実録犯罪誌ネタがところどころに差し挟んであってイカス。なんかさ、韓国映画あんましみてないけど、こう恰幅のいいヤクザの組長的なのが若いモンにハメられてオタオタしたあまりに白い粉を頭からかぶったり汁物ぶちまけられたりするシーンをたんのうするのがなんとなくすきになってきた気がする。ヤクザに拉致られた少女は冬の小鳥つー孤児の心象をたどる静かな映画の主演の子なんですけど、親からまっとうな愛情を得られないことの悲しみと怒りによって表情や言葉をなくしてしまった的な役どころがうまいですなー。アレコレ問うこともなく入り浸るのをしかたなくゆるす質屋のウォンビンの前でだけのびのびとごくふつうの子供らしいふるまいをしてるわけですが、この少女がウォンビンの心の暖かさを保っていると同時に殺人兵器としてのスイッチを入れる役回りとなってしまったというあたりがせつないですな…。今作のウォンビンについてあの役をこなすにはちょっと若すぎるんじゃ?みたいな意見のヒトもいるようですけど、むしろ新婚ホヤホヤ(を中途で断たれた)血気盛んな年齢だからこそあそこまで出来たって見方のがリアルにも思えるけどな。レオンやトゥルーグリットではトシくった男が少女を救うためにひと肌脱ぐけど、現実で老齢者がああいう事態になったらまず諦めが先にくるよね。そこを諦めないからこそ映画になるんだけどさ。んでラストはウォンビンが元特殊部隊員つーアレもあってかなり血のでる戦闘シーンに突入してゆきますが、ヤクザ側のベトナム人(この俳優さん自身はタイのヒトらしい)暗殺者とのナイフバトルがなかなかかっちょえーよ。あすこだけちょっと沈黙の戦艦のナイフバトルちっくだった。真相をさぐろうとウォンビンを追うお巡りさんとかもでてきますけど、最初乱暴なふるまいしすぎててヤクザの構成員だと思ってた。同レベルに暴力的なんで並べられると見分けがつきづらい。
ザ・ウォードは「JOHN CARPENTER’S〜」の影付きの立体的なタイトルがでてきただけでアガるんすけど。あれみれただけでもう満足してる自分がいます。話はわりとオーソドックスなアレなんですけど、語りかたがうまいので終盤までふつうに謎が持続します。カーペンター監督の映画もインシディアスと同じく不可解な忌まわしい存在や物体をモヤモヤさせずに超クッキリハッキリでる描写しますけど、カーペンター映画の不可解物の造詣って肩にいつのまにかへばりついてた誰かの吐いた痰みたいなおぞましさがあるんですよね。そのうえなんとなく画ヅラの色けに品があるってゆうかさ。画面の比率に静けさや控えめさのが多いからかな。インシディアスにでる物体ておしろいに覆われてていかにも上品ぶってるわりにガチャガチャうるさくて不粋でぜんぜんこわくないんですよね。胴回り太めの霊とか画ヅラ上どうしても恐怖からかけ離れちゃう気がすんだが。ウォードは展開上閉鎖病棟の女囚たちが数人でてくるんですけど、60年代ころのメガネっ娘とかツインテールニーソはエンジェルウォーズのそれよりも風格が上だと思いました。カーペンターの前ではスナイダーは小僧っ子なのだなーとしみじみした。
ロス決戦はなんかアメリカの愛国映画なのかな。インデペンデンスデイブラックホークダウン的な重量戦闘中心につくりなおしたかんじ。世界各地が滅亡寸前のなか西海岸で任務にあたっていた海兵隊員数名だけがどうにか前進しはじめて…みたいな話で、まだ戦況もよくわからないなかで退役まぢかのアーロンエッカートが加わる小隊が生き残りの市民を救出すべく街中の警察署をめざしてくんですけど、街じゅうが白い煙に覆われてて視界が閉ざされてるうえ、そこかしこにいる宇宙人が光線銃放ってくるもんでいきなりひどい紛争地帯に放り込まれたふうになってテンパる若い米兵たち。地球侵略目当ての宇宙人は装備的にも肉体的にも「どうにか殺せる」水準で(「地球の技術よりもうすこし上」くらいのかんじ。敵が主人公側と比べてどれくらい強い/弱いのかで話の方向もだいぶ変わっちゃうだけにロス決戦の「敵」強度の設定はかなり絶妙な気がする)、弱点や攻略法を把握するまでかなり苦戦を強いられます。前半の苦戦具合が紛争映画で、後半の進んでく攻略具合が昨今の「倒してく」系のゲーム画面にちょっと似たかんじもする画ヅラ。インデペンデンスデイと同じく「1カ所叩けば勝てる」仕組みなとことか特に。まあ重戦闘モノでカタルシス希望ならいやがおうにもそうせざるをえないすけどね。救出した一般人に幼い子供たちが何人かいるってのもドキドキ演出の定石ですが基本に忠実でいいですなぁ。重爆撃のすぐそばに可愛いくて壊れやすいもんを配置するっつーね。兵士が子供なだめるためにだいじょぶだから!なっ!て言ってるそばからおとながバンバン死んでくエクストリームな状況で子供たちわんわん泣きどおしですよ。ついったでは宇宙人造形が投げやりすぎって意見がありましたけど、まあいろいろ詰め込みすぎると肝心の愛国カタルシスが薄まっちゃうのでしかたないんでは。
ラビットホラーは呪怨の監督さんなんでなんとなく。なんかウォードと似通ったかんじのネタでひたすら暗くてかわいそうな映画だった。3D効果が部屋に舞うホコリに使われてたりして新鮮できれいだった。雨や雪みたいな自然現象でつかうとわりといいかもな。
あと日本郵船海岸倉庫でクリスチャンマークレーのクロックをチラッとみてきた。映画の時計のシーンばっか24時間分うまいことつないである映像作品。西部劇とラブコメがやたら多かった。それぞれちがう映画をつないであるのに、時計の針を気にするシーンがどれもわりとスリリングな転換点だったりするせいで緊張感がずーっと続いてるふうな雰囲気になってるのが面白かった。事の次第みたいに日本語字幕つけてDVD販売してくんねーかな。権利料膨大すぎてムリか。