縄文時代に鶏いましたっけ

『仏教が伝わり、仏の姿かたちも日本にもたらされ、さらに中国古代の神話や伝説、古典文学の登場人物が、中国への憧れとともに絵に表されることになった。そして日本では、中国から主題と表現を学びながら、風土や信仰感情にあわせて神々や人のかたちを変えていった。』
上記『』内はクリーブランド美術館展(20日東京国立博物館 平成館)の展示「神・仏・人」の説明文から抜粋したブツ。500年以上前に日本で描かれたモノを一時的に里帰りさす的な展示で、国外流出つーと盗難的イメージがなんとなくよぎりがちかもしれんけど、むしろアメリカンあたりに持っててもらえると美術品類の管理はおそらく完璧にしててくれるだろうから安心かもしらん、とか思ったりした。政情不安定な国にあるとどうなるかわからんしな…。今展はタダ券もらったから暇つぶし程度に行ってみただけだったんだが、わりと仏教系の美術があってちょっと面白かった。特別出品1の釈迦如来の絵、脇侍の普賢・文殊菩薩がなんかゴツいおっさんすぎる。「菩薩」ていわれてパッて思いつく性差が判然としない風体てのは日本で醸成されてった後年のアレなんだろうか。あと円空展でみた円空さん絵でもそうだったんだけど、あのころの僧侶とか仏が絵で描かれてる場合、なぜか爪が長いんだよね。女子がするみたいに先を尖らせてきれいに何か塗ってるふうなんだよ。昔はああするのがマナー的なもんだったんだろうか。その絵のとなりに薬師如来十二神将像(1)て絵があんだけど、眷属に「十二神将」いるのってわりとふつうなんだろうか。永久保さん漫画で安倍晴明十二神将てのがでてくるけど、アレと同じなのか?ただ数が同じってだけで関係はないのかな。その絵の並びに地蔵菩薩像(3)て絵があるんだけど、これひと目みて欲しくなったよ。神仏関連の絵で欲しくなったのはこれがはじめてだ。背景が黒でコントラストが強烈だからそう感じたのかな。地蔵菩薩さん、金色の雲の上で色ちがいの蓮の花の上に立ってて、頭のまわりに金色の輪っか(輪っかの内側は緑のグラデーション)が描いてあってそれだけでも綺麗なんだけども、なんか、地蔵菩薩さんのお顔が妙に色っぽいというか、これどう考えても実在の尼さんモデルにしただろ、ていわんばかりの生々しさ。そのうえ化粧はする必要がないはずにも関わらずクチビルが赤すぎでお色気がありすぎます。これ修験者のいるとこに置いとくと雑念が溜まりすぎて危険なことになる可能性大。この絵のとなり…だったかな。仁王経曼荼羅(4)つー鎮護国家を祈る仁王会とかいうイベントのときに使う絵だとかで、単純な線画なんだけども、描かれてるキャラが武闘派ばっかだな。不動明王を中央に、その周囲三方には強面の三面もつ明王(か権現的なもんか)がいて、ほかにも武具もったのが囲んでた。その絵の裏側にはどうもそれとは別の曼荼羅的なもんが描かれてるふう。そのとなりには二河白道図(5)つー極楽行きたい人用に仏教の教えをイラスト化した絵(クリスちゃんの教会絵も文盲のヒトのためだったんだっけね)があるんだけど、なんかブルースリーの塔のやつ思い出した。あそうそう、あと展示のしょっぱなに17世紀ころの雷神図屏風(15)があって、それみたらなんだか山本五郎左衛門がよぎってきて(豪快なまゆげ部分から想起されたのか?)、なんだろうね、あのヒトもやっぱり怨霊てことになるのかな。すると元は人間だったんだろうか。そこらへんの山本さんがヒトから妖怪の総大将になるくだりを漫画にでもできたら面白いだろうにな。ゲニウスロキの作家さんあたりやらないかしら。完全に想像になっちゃうけど(霊の人、山本さん霊に半生とか直接聞き出せないだろうか)。仏画にまじって福富草子絵巻(11)てのがあって、舌切り雀というか捕らぬ狸の皮算用的な笑い話だった。イイ着物もらえるー!!とばかりに古着全部燃やしちゃったら結局もらえなくて真っ裸でブルブル震えてるふうな話。諷刺的なのは南瓜図(24)ていう、ありんこたちがカボチャ引いてるやつが可愛いかったな。説明では祭礼を戯画化したのでは、みたいなことが書いてあったけど。とりあえず仏画は前半だけで、後半は山水とか植物画が中心だった。日本画とか普段ほとんどみないんで新鮮だった。薄図屏風(27)はすすきが一面に描かれてるシンプルなアレですけど、広いお宅にアレあったら家んなかにすすきの原があらわれたふうでさぞきれいでしょうね。金具部分もちゃんとすすきデザインされてて近寄ってみてもきれいだし。屏風系は自然の風光明媚さを家のなかに置くことを念頭につくられてるせいか、絵というよりデザイン感が強いというか、壁紙・インテリア発想の先駆けなんですな。燕子花図屏風(41)もそこらへんが顕著で、ちかくでみると判子的なテイストの単純なベタ塗り絵なのに離れてみるとすごく端正なふうだった。デザイン感よか絵として仕上げてる屏風でヘンだったのが、四季花鳥図屏風(29)ていうやつで、左右でどうも描いてる人がぜんぜん違うのかな?向かって左手のはトリがぼんやりしてるんだけど、向かって右手のは鷲(トンビか?)が雉を仕留めてる中のエグめ場面が描かれてて、これ…家んなかに飾るってどういう臨戦態勢の人?て思わずにいれなかった。雉を仕留めてる中のよこでも他の鷲がトリを狙ってんだよ。どういう目的で描いたのかねえ。あと気になった絵は禊図(40)ていう、高貴な女性への片思いを断とうと「恋せじという禊」をしてる中とかいうアレなんだけど、川の前の土のうえに白い紙を等間隔で3つ立てて、その前で御幣(つーの?)持ってる男のヒトがいるんだけども、あれは陰陽師とかいうやつなのかな。あの様子がわりと具体的なんで、当時よくやってたのかもしらん。あとは蔦の細道図屏風(42)てのは山だとか自然が妙に簡略化されて描かれてて、ちょっとRPGのビジュアルくさかった。後半には中国にもろに影響されたと思しき山水画ありましたけど、あすこらへんの「人ちっさい・自然でっかい」的な箱庭悦楽ふうの描き方は西洋で1700年頃(だっけ)に流行った風景画のノリとまるで同じな。どこでも考えるこた同じなんだね。そういえばなぜかこの展示にまじってアンリルソーの絵があったな。当時画壇からせせら笑われたらしいけど、あの人の描き方や色合いの自由さは正攻法・正統派の人にはたどりつけないんだよね。きっと笑って否定しとかないと怖くてしょうがなかったんだろうな。それ評価しだしたら自分らのやってることが全否定されかねないし。クリーブランド後は券についてたんで人間国宝展もみたんだが、このなかに縄文時代の火焔型土器(77)があってさ。実物はじめてみたんだけど、これ…「火焔」てされてるフチの部分、ニワトリが4羽くっついてるようにみえるんだが。トリとトリの間のツンツンしてるのは草なんじゃないのか。で、その下の線模様は根っこ。地面にいる鶏と草と土のなかを模してるふうにみえる。例によって推測でしかないけど、これ植木鉢だったんじゃないのかな。それも観賞用じゃなくて、穀物の苗なんかを害虫から守るためにある程度成長するまでココで育てるとか。安定性の悪いつくりなのは、おそらく持ち運びして屋内なんかにも吊るしておけるふうにするためなのでは。まわりにヒモを通すための穴みたいのがついてたし。ニワトリ部分さ、外側だけしっかりつくってるのに、内側はまるで「裏側」感あふれるどうでもいいふうなつくりで、外からみてどうであるか、てのがすごく大事だったかんじだよ。ただ、トリも苗は食うからな。その観点からすると植木鉢推測は違うかもね。常設展の1階にある土器コーナーもみたんだけど、こう…ぐるぐるした渦巻き模様が時代越えても描かれてるんだよなー。あのぐるぐるなんでしょうね。海の渦巻きか、風が吹き荒れるさまか。ハート型土偶の体の要所要所にも描かれてるんだけど、あれって鎧か刺青の模様じゃなければ、もしかして気の流れを表してたのかな。大昔にそんなの気づいてたかね。模様だけに着目して土器眺めてると意外と共通点があるんだよね。「模様の継承」が代ごとにあった、てことなのかね。模様ごとに描かれてる箇所と形の統計とか、学者さんはもうとってるかな。常設の土器コーナー、じっくりみたかったんだけど閉館早くて半分もみれなかったよ。デカい埴輪とかちょっと入ってるくさいんだよな。当時のもんとは限らないだろうけど。人間国宝展は土器よかガッチリつくりこまれた工芸品的なもんが多くて…や、そのなかでも古い仏具がけっこうあったな。『鎮壇具は寺院において塔堂を建立する際、土地に住まう神を鎮めるため、建物の基壇地下に埋納された品々。』てことで興福寺奈良時代の鎮壇具とか出てましたけど、埋めとかなくていいんだろうか。あとカッコよかったのが仏の骨をおさめとく金銅火焔宝珠形舎利容器(80)ていう鎌倉時代の金属製の美術品で、中央に顔が4つ付いた五鈷杵(ですっけ?)の上に宝珠がのっかってるやつ。これに入れとけばヘンなもんに悪さされずに済む的なアレなのかな。五鈷杵の中央にくっついてる顔、なんか入ってるんじゃないのかなあ。展にでてる古い仏像に頭ん中で話しかけたりすると、入ってる像はちょっとうなづくふうにみえるときがあるよ。あと気になったのは刀とかかな。刀みてるとごはんつぶ思い出すんだけどなんでなんだろう。腹へってたからか。19の相州正宗さん刀の説明にあった『沸(にえ)とは刃を構成する肉眼で捉えられる粒子のことで、白く輝く粒子が刃文に千変万化の変化を与える』て説明がよかった。江戸あたりの茶碗なんかもでてたけど、あのテの朴訥ふうなテイストのって要するに自然の岩をそのまま持ってきた的なのを目指してるってことなんだろうか。茶釜というか壺的なのはなんか…どれもフタだけが異様に新しいかんじがして違和感があったな。工芸方面のでは53の漆彫りの箱で、手前に牡丹と蝶+その後ろに菊、と二重に彫り物がしてあるんだけど、技術はスゴいんだけどどっちも同じ赤色だから何が彫ってあんだかよくわからんくてな。どっちかを違う色にしたほうが映えるんじゃなかろうか。それやるとあざとすぎるか?あと気になったのは最近のやつで、129のデカい壺は質感がマカロンぽいし、131の青銅のトリはラクガキの鳥がそのまんま抜け出てきたふうで可愛いかったですし、136の蒔絵はでっかい蜂と六角形がデザインされててキレーだった。それと和傘の人は今展140・141くらいのクオリティが出せれば売れるだろうになーと思いました。高くなっちゃうからダメか。