モーガンフリーマンは目をニカウさんぽくしたら完全マンデラ顔になるね

日曜にみたインビクタスですが、幽閉生活から一転して南アフリカの大統領になったマンデラさんが、理不尽な差別によって感情的対立したままでいる自国内の異人種間の心の溝を埋めるためのきっかけとして目をつけたのが万年負けどおしのお荷物ラグビーチームで、そもそもこのラグビーチーム自体が南アフリカ国内に住む白人がたのしむためにつくられたものなので、ラグビーの試合を鑑賞する際も白人さんはふつうに自国チームを応援するものの、黒人さんは黒人差別の象徴でもある自国チームが負かされるたんびに大喜びする。しかもマンデラが政権をとってからというもの、イキオイづいた黒人さんたちはこの弱い上に差別の象徴みたいなラグビーチームを自分たちの色に染めてイメージを一新しようと画策していて、市井では全会一致で決定しかかったものの、それを知ったマンデラさんがあわててその決定の場にのりこんできてチーム色を変えてはいけないと訴える。仮にチームを黒人さんだけにとって都合のいいものに作り替えてしまったら、南アフリカ国内に住む白人さんたちが全員ソッポを向いてしまうからだ。それはかつて白人が黒人を虐げて好き勝手やっていた頃の行いと変わらなくなってしまう。いやなことをされた相手と同じことをやれば憎しみや悲しみがかつてのように繰り返されるだけだ。マンデラさんはこのラグビーチームの再生に市民の心を解きほぐす鍵があるはずと見定めているらしく、周囲がなかば呆れるのを尻目に大統領仕事として政治や外交といった業務と同じように心血をそそぐ。当のラグビーチームの選手たちは黒人が大統領になったことに対して不安を感じている。自分たちが黒人に対してさんざん迫害してきたのと同じことをされるんじゃないかと思い込み、よけいにやる気が失せかかっていっていたそのとき、チームの主将であるマットデイモンがマンデラから呼び出される。マンデラはデイモンに、数十年幽閉されていたとき、自分を奮い立たせた詩があったこと、決して運命に屈しなかったこと、逆にデイモンからチームを奮い立たせる方法をたずねたりと数時間雑談らしきものをし、直接こそ言われなかったものの、なんかチームを立て直してほしいらしいと受け取ったデイモンは選手たちに厳しい訓練をさせはじめる。マンデラも地域親交のためと称して選手たちにちびっこ青空ラグビー指南を命じたり、選手の名前を暗記しては対面時にひとりひとりに対して呼びかけたりとなんとかやる気をださせるべくアレコレ手を尽くす。マンデラからの青空教室お達しを聞くなり選手達がそんなムダな上メンドクセーことやってられかよ!!とかキレるんですけど、いざちびっこ黒人たちに教えにいってみるとキャーキャーして楽しかったらしく、かえってヤル気に拍車がかかる。マンデラさんはヒトを動かすのがなにげにうまいもよう。ちなみにこのラグビーチームのエピソードだけでなく大統領官邸周辺の働き手のエピソードも同時進行展開するんですが、しょっぱな官邸にマンデラさんがきたら白人はお払い箱になるんだとばかりに白人職員全員が退職体勢になっていて、びっくりしたマンデラさんは全員あつめて辞めたければ止めないけど基本的に人種で辞めさせたりしない旨通達したり、あとマンデラさん警護のSP人員が足りないということで配備されてきた人が白人で、黒人SPのヒトが必要以上に神経質になっちゃったりといろいろあります。最初ピリピリしてるSP間も、ラグビーチームが順調に勝ち星をふやしていくにつれ休憩時に仲良くラグビーごっこしだしたりと心的垣根が徐々に低くなってくありさまが微笑ましい。ぜんたい「共通の目的」をもつと仲間になりやすいというあたりでは南ア版プロジェクトXといった風情。選手だけじゃなく、あらゆる箇所のヒトのやる気をこれでもかと鼓舞することがでかい賭けに勝つ秘訣なのかなと思った。「勝てなくてもしょうがないよ。」みたいな考えはだめ(←「負けたら殺す」的な意味じゃないです念のため)で「なにがなんでも勝つ」でいかないといけないんだなーとしみじみと。南アを良くするために身を粉にして働くマンデラさんのワーカホリックっぷりも合間合間に差し挟まれてまして、デイモンのチームの試合をみながらちょっと仕事しようか、て秘書のひとにちょくちょく書類もってこさせたり、いっときもむだにできないといわんばかりに仕事しまくった挙げ句過労で倒れてしまって、それでも仕事しようとしてマンデラさんが催促してくるんで、秘書のひとがマンデラさんの身を案じるあまりにいうこときかなくなってしまい、仕事したさに業を煮やしたマンデラさんが「わたしは大統領だぞ。」とか穏やかに凄むところがちょっと萌えた。実際に見聞きしたわけじゃないけど、幽閉された27年間はマンデラさんが大統領になるにあたって必要な時間だったんだろうなあとなんとなく思った。ひどい仕打ちに同じ仕打ちをしたらその人と同じになってしまうこと、どんな状況下で何をすれば目の前の人間は心をひらくのか。つらいときにどんな心持ちでいればいいのか。1日たりともむだな時間はなかったろう。なにもない日でも自分がいる。その自分はどうすればいい?解放後の行動指針を27年かけて練っていたとすれば。みじかい人生でできることは限られる。不必要なことをそぎ落とすための年月であったかもしれない。南アを発展させるためには自分個人の欲望は邪魔になる。まずは人種間の軋轢を無くさなければ…。インビクタスパンフの松本仁一さん文によるとマンデラさんはあくまで「黒人と白人が平等に手を取り合うこと」を最重要視していたとのことと、あと1期であっさり大統領職から退いたそうで、どっちも我欲を捨ててるからこそなのかなーと思った。権力を握るにふさわしいひとの代表みたいな方ですな。でもマンデラさん後に政権とったアフリカ民族会議のヒトがマンデラさんの理念をあっさり捨て去った上欲望にとらわれまくった采配をしてしまって混乱してきつつあるとかで、後続にそういう理念教育とかしなかったっぽいですね。ひとりだけが優れててもしょうがないんだよな。優れたひとがでたらそこから「続ける」努力をしてかないかぎりは優れた統率者がやったことが水の泡になってしまう。まあひとりにアレもコレも求めるのは酷ですけども。しかしマンデラさんは人命を標的にしたテロ行為も目的達成されたらすぐやめたし、目的達成への執念とか精神状態の案配加減とか采配バランスが驚異的によすぎる。もしすこしでも憎悪や我欲にとらわれていようものならテロ行為をだらだら続けて無用の軋轢を作りかねなかっただろうし、大統領の座についてもいちいち欲望が芽をだして危うい采配ばかりしていたかもしれない。飢えた虎は無を喰らうことはできない。マンデラさんは無我をもってすこしもブレることなく、27年の歳月をあますところなく恵みとした。
今作はとりあえずマットデイモンのふつうの人っぽさがなんかすごくふつうでよかった。ついでにリアルラグビーのひとがすでに4回みたとのことでのせておきます。最近イーストウッドさんはイイ話ばっか撮ってらしてますけど、たまには痺れる悪役もやってください。トシくってるからかえってむずかしいか。白い肌の異常な夜での女たちの企みを知って怒りをみせた際の三角形のへの字口からくいしばる歯がみえる凶暴なツラとかゾックゾクします。

しかしいがみあった人種間の邂逅がこれだけわかりやすくつくってある映画がアカデミーとらないってなんなのアメリカ?これしかねーだろJK。