そんなに苦労せんでももっと普通に降臨すると思うがなあ

私は、マリア・カラス(シャンテ)→未来を乗り換えた男(ヒューマントラストシネマ有楽町)→ヘレディタリー/継承(角川シネマ有楽町)とみまして、ヘレディタリーは悪魔の王が人間に降臨するまでの過程を丁寧に描いた話。なんかツイッタ評からこの映画怖い論が多かったんでもっと違うモノを想像してたんですが、結局アメリカは悪魔から離れられないんだなーとしみじみと。最初はある一家のおばあちゃんの葬式からはじまって、そのおばあちゃんに可愛がられていた孫娘の奇行っぽい行動(舌を鳴らす等)を追ってくうちにこの孫娘さんが事故で凄惨な死に方(首がちぎれてしまう)をして以来、この娘さんの母の精神状態がおかしくなっていく・・というか、このお母さんの精神状態がちょっと不安定な頃合いを見計らってかのように優しい言葉で近づいてくるおばさんがいて、結局このおばさんは死んだおばあちゃんの仲間だった人らしく、まんまと悪魔の王が降臨するにふさわしい状況に導かれてしまう。この間に娘さんの事故死の原因をつくりだした息子さんの身辺に奇妙な出来事が起こり出して・・という展開。おばあちゃんたちが降臨さそうとしてた悪魔の王というのがなんか人間の男じゃないと降臨しないらしく、息子さんがそのターゲットに狙われたわけですな。女はどういうわけかダメで、最終的にこの一家の女性全員(死体のおばあちゃん含む)が首が切られた状態で悪魔王にひれ伏すかんじになってゆく。孫娘さんが生きてた頃にしてた奇行のひとつに「窓にぶつかって死んだ鳩の首を切り落として持ち去る」場面があるんですけど、切り取った首はもしかして悪魔王への供物かなんかなんですかね。おばあちゃんもとっくに死んでるのに掘り起こされてわざわざ首切り落とされてるし。タイトルの「継承」てのはこの首切り落としの連鎖のことなんだろうか。悪魔王が降臨するまでの間、そのターゲットの息子さんのとこにはうっすら幽霊みたいなもんがでるし(暗がりではっきり見えないくらいの撮り方なのがうまい)、死んだ妹がよくしてた舌鳴らし音が聞こえてきたりとビクついて過ごすことに。その息子さんのお母さんはやけに優しいおばさんに言われるがまま降霊術を試したら事故死した娘さんらしき存在がきてアグレッシブにモノを動かしたりノートに絵を描いたりするんでさらに情緒不安定になって家庭内は崩壊状態に。この間唯一まとも(?)でいる旦那さんはいろいろ混乱してる奥さんの間違いで焼死してしまう。この焼死の原因は死んだ娘さんが霊体になってからラクガキしたノートを燃やしたせいなんですけど、このノートを最初奥さんが燃やそうとしたときには奥さんの服に火がついたんですが、2回目に燃やそうとしたときにはどういうわけか旦那さんが燃えてしまうんですよね。邪魔者認識をされたせいなんだろうか。ぜんたい効果音が心臓のドクドク音ぽいやつだったりして怖い雰囲気を盛り上げてるし、霊ぽいモノのもやっとした見せ方もいいし、精神疾患がらみにするのも思わせぶりでなかなか面白かったです。エクソシストみたいに悪への対抗馬を出さず、悪魔王降臨まで一直線に崩壊させてく手法がむしろ清々しい。クライマックスの謎の達成感ビジュアルも含めて。

未来を乗り換えた男はなんか現代でドイツ軍が侵攻しかかってる的な設定の話で、ドイツ軍にもうすぐ摘発されそうな緊迫した状況下でフランス人(ユダヤ人?じゃないよな)の主人公が知人からある作家宛の手紙を預かって、謝礼金目当てに言われたホテルの部屋に尋ねてくんですけど、作家はもう自殺済だったんでその部屋にあった遺稿を勝手に持ち出して作家名を名乗って生きてく話。手紙を預かったバーに戻ったらもうドイツ軍がきてたんで命からがら逃げ出して、列車の荷物車両?にこっそり乗り込んで適当なとこで降りてホテルで部屋とってぶらついてたらチビっ子がいたんで遊んでるうちにその子の家にあがることになって、ラジオ直したり耳の聞こえない母親と会ったりしてるうちに親密になってきて、ちびっ子の具合が悪くなったというんで医者を探してたらその医者の部屋に自殺した作家の嫁がいて、なんとなく近づいてくという。主人公は作家が自殺したことを言わないままその作家嫁と懇意になりたい風なんですけど、作家嫁はどうしても作家の夫を探そうとしてて、いまいち打ち解けない。そうこうしてるうちにもうすぐドイツ軍がやってきそうになってきて、アメリカ行の船に何度も乗せようとするんですけど、そのたんびに作家嫁はもどってきてしまって、どうしても作家の夫を探そうとする。主人公はなぜか「捨てた側と捨てられた側、どっちが早く忘れる?」的なことをたびたび聞かれるんですけど、自殺した(妻を捨てた)夫を装っていながら(夫に捨てられた)妻を口説こうとしてるんで、質問には答えられない。難民になることの絶望感が漂ってる映画。

マリアカラスは他の映画みようとしてダメだったから仕方なくみたんですけど、すごい歌唱力をもつカラスが声の調子がいいときには大絶賛されるものの、ちょっと調子悪くて公演やすむと大バッシングが起きるという激しい起伏を味わった人生だったとか。50代で死んじゃうとか音楽関係の人って短命が多いのかしら。長く友人関係にあった富豪がジャクリーンケネディと結婚したときには相当ショックだったらしい。数年後にその結婚は間違いだった、て富豪側が認めたものの。