中盤までピーターフォーク=刑事とふつうに思い込んでた

エッセンシャルキリング(7日。イメージフォーラム)→モンスターズ 地球外生命体(えぬ)→復讐捜査線(新宿ミラノ)→スーパー!(新宿武蔵野館)→マイキー&ニッキー(ユーロスペース)とみまして、マイキー&ニッキーはカサベテス(ニッキー)が裏社会(パンフによるとギャンブルシンジケートつうことです)のお金をガメてしまったことから命を狙われてるので怯えてホテルの1室に閉じこもってて、その部屋から唯一信用できる幼馴染みのピーターフォーク(マイキー)を呼びつけてアレコレわがままぶつけるんですけど、ピータフォークのほうはすでにシンジケート側からカサベテス監視と殺害に都合のいい場所への誘導を言いつかっていて、カサベテスから怪しまれないようになんとかその場所まで連れてこうとすんですが、カサベテスの気ままでちゃらんぽらんな言動につきあってるうちに計画は崩れるわ親友としての情にとらわれて殺す気が失せてくわと殺害予定が頓挫するかにみえたものの、カサベテス自身の自己中っぷりが原因で身を滅ぼしてゆく話。カサベテスは5分前に言ってたことと全然関係ないことをしに突然走りだす的なむちゃくちゃな気まぐれさんで、カネに関しても対人でもその性質を等しく発揮するもんだからあちこちで呆れられてるんですけど、なんか憎めないとゆうかどうにも魅力があって関わったヒト全員がカサベテスのことをなんだかゆるしちゃうんですね。もうあんたなんか大嫌いよ!!てバシバシ叩きながらでも愛してる…!!とかディープキスしちゃうようなくりかえしで。ひどくどうしようもないところとひどく魅力的なところが同居してる的な人格らしい。この調子でカサベテスはほうぼうに女の愛人をつくってるんですけど、おんなだけといわずなんだか男も魅了されてしまうようで、ホモとかそういうアレじゃないんですけどカサベテスのことを陥れようとしてるピーターフォークもどんどんカサベテスのペースに巻き込まれてほだされていってしまう。カサベテスは好きな相手に関するほんのささいな出来事とかをぜんぶ覚えていて、特にピーターフォークは幼馴染みなので本人も忘れかかってたようなことを事細かく記憶していてたまにそれを当人に語って聞かせたりするんですね。他人から1〜2回聞かされた程度の軽い話を忘れてしまうのはごくふつうのことなんですけど、それは語っている相手がどうでもいい相手なほど顕著で、でもカサベテスはピーターフォークの幼いころのできごとをしっかり覚えていてまるで自分のことのように語ってきたりする。自分に関することをそこまで覚えていられたことにハートをわし掴まれかかったピーターフォークは、そんなんならオレの妻にだってできることだろう、とばかりに奥さんに小さいころの話をしても、話して聞かせたばかりなのにもう忘れかけてるんですね。オレのことを妻よりも深く知っているあいつ…!そうしてカサベテスに溺れかかったピーターフォークが、ふたりで逃避行の旅に出ようぜ…///とカサベテスに愛の告白をもちかけるんですけど、逃避行前の景気づけにとピーターフォークへあてがった女がカサベテスとはエッチしたのにピーターフォークと触れ合うことを拒否してきて、傷ついたピーターフォークはどうせ俺はブサイクだし!お前はイケメンだからいいよな!て激怒してカサベテスと路上で取っ組み合いの喧嘩(このシーンはどういうわけか2人がセックスしてるようにみえるよ…*)して絶交してしまう。この絶交前の激しい取っ組み合いがなんとなくセックスっぽいのにくわえて、カサベテスのほうも「1人の女を2人でハメて穴兄弟」て発想が間接的にピーターフォークとセックスしたことになろうとしてないか?ピーターフォークと触れ合うのを拒否した女も、ピーターフォーク自身がどうというより自分が2人の愛情を媒介するための道具になるみたいにかんじてイヤだったんじゃないのかなあ。カサベテスは意識してか無意識にかわからないんですけど、ヒトのこころのつかみ方を熟知していて女だろうが男だろうがガッチリ惹き付けてしまうんですが、こころのつかみ方は知ってるくせに大切にする気はさっぱりないらしくて、せっかくこころをつかんだ相手に自分の欲求ばかり押しつけて散々ふりまわした挙げ句ないがしろにするような仕打ちをくりかえすもんで、結局こころが離れてしまうエンドレスなんですね。そんで結局ピーターフォークも喧嘩のあとにカサベテスの魅力呪縛からどうにか放たれるんですけど、いろんな人たちから見放されて行くところのなくなったカサベテスが匿ってもらおうとしてピーターフォークの家まで押し掛けてくる。でもピーターフォークは頑として会おうとせず、妻に応対させて居留守を続ける。魅力の塊であるカサベテスに会ってしまうとまたほだされてしまうので全力でドアを塞ぎつづけるピーターフォーク。そこへ殺し屋の乗った車がゆっくりと近づいてくる。それに気づいたカサベテスは血相をかえてピーターフォークの家のドアを猛然と叩き続ける。マイキー!マイキー!助けてくれ!ドアの向こう側ではまるで暴風雨にされされるような表情でピーターフォークが必死にドアを塞ぎ続ける…。これは男同士の友情モノというよりは男版のファムファタルものなんじゃないだろうか。ファムファタルといえばひとりの女の周囲が滅んでゆくモノですけど、男なので周囲に迷惑かけつつも周囲はだれひとり死なず男だけがひとりしぬっつー。異常魅力の持ち主からは津波地震と同レベルに持ち物ぜんぶ捨てて全力で逃げないと囚われてしまう感がクライマックスに濃縮されてた。あと衝撃の展開直後に即エンドクレジットっつー暴力構成にシビれた。なんかこのころのアメリカ映画ってちょっとフランス映画みたいな「どうなったかって?そんなのてめえで考えろ!」的な放置構造してておとなでかっこいいっすね。このあと80年代ころからどんどん幼児退行してったんだな。マイキー&ニッキーに少もどしますけど、冒頭のほうでピーターフォークがカサベテスを街に連れ出した際に、カサベテスが生来の気まぐれを発揮したようなかんじでアチコチさまようけど、あれは微妙にピーターフォークのことを怪しんでいて殺し屋をまくためにわざと脈絡無くほっつき歩いてるのかな。なんかカサベテスはちゃらんぽらんなようでいてある部分で異常に勘が鋭いんですよね。ピーターフォークのいいわけを聞き入ってるときのいぶかしげな表情とか、まるで彼氏の浮気を勘ぐる彼女のような目つきだよ。危機を切り抜けるのは天才的なんだけど、対人やカネに関することにはどうにも自堕落なんだよな。尚、この映画の監督さんは女性の方でインタビュー拒否だそうですけど、ヤオイ作家なのでふつうに恥ずかしいんだと思います。

スーパー!はせっかく嫁にした美人さんをギャング(ケビンベーコン)に横取りされた気弱な中年男が、たまたまテレビでみた子供番組のキャラに感化されて通り魔スレスレの悪者退治をしはじめる話。手作りの覆面と衣裳つけてヤクの売人や強盗たちをスパナでガツガツ殴るスタイルで、まあ一応は人助けになってるからいいものの、理念をちょっと間違えたら単なる通り魔でしかないかんじ。この主人公はべつにアメコミ好きとかではなく、あくまで気弱な自分を変えたい気持ちで正義の味方行為をやってるだけなんで、正義の味方行為を続けるための資料として漫画店にスーパーヒーローものの漫画を買いにくるんですが、そこに勤めてるハタチそこそこのアメコミマニア女子にソッコーで正体見抜かれたうえ強引に正義の味方行為に加担されてしまう。この女子がとんだイカレ女で、さしたる理由もなく男友達を半殺しにしてキャーキャーはしゃいだり、なりゆきとはいえ主人公を助ける際にギャングの手下を車で押し潰したりといったシャレにならない殺人行為でいちいち狂喜乱舞したうえ、コスプレ暴力という非日常体験で舞い上がったのかコスのまま主人公に襲いかかって騎乗位で犯してくるとゆうスーパーヒーローの暗黒面を体現しまくってるふう。こうゆう破壊が目当ての逸脱キャラと比べると、ヤクの売人が法に従順に過ごしてる善良な市民にみえてしまう。その二者が同じ画面内にいるとよけいにそうみえる。売人はあくまで利益が目的なのに対して、通り魔ヒーローは名誉と自己満足が目的という法逸脱系でも欲求自体がまるで逆同士だからあたりまえなんだけどさ。犯罪者でも常識人と狂人ではベクトルが違うっつー。最終的に主人公は奪われた嫁を取り戻すべくギャングの根城に侵入してちょっとした戦争状態に突入したりします。そのシーンではどんなひょうきんなキャラであろうとえげつない殺人をしてる時点で冥府魔道を歩んでいるのだ、という事実がつきつけられる。特に殺しを快楽の道具と無邪気にみなすアメコミマニア女子に対して。主人公に対しては「スーパーヒーロー」という生き様がどういうものであるのかという現実がつきつけられる。いくら正義の味方行為をして悪から救いだせた(=お姫様救出劇)としても冷めた女の心は決して取り戻せないこと。冥府魔道を歩む人間には「ふつうの幸せ」が得られないということ。特権的な幻想に浮かれて「正しい(と思い込んだ)」殺しにはしゃぐアメコミマニア女子じゃないけど、スーパー!をみるとスーパーヒーローものの漫画や映画では特別な能力をもつキャラクタはなぜかみんなその能力を操るにふさわしい精神状態にあるというか、ひどい暴力をふるっても頭のおかしい人にみえないようにするために必ず万人が納得するふうな都合のいい性質にされてるってことがよくわかる。現実にはそんな都合よくいくわけないじゃん、能力授かった人がリアル変質者だったらどうすんの?という素朴な疑問が実はとってもスリリング。多くのスーパーヒーロー話では超人的能力を授かったヒトがリアル変質者だった場合、悪者にされて退治されちまうんですよね。多数の幸せのために少数者を虐殺するが基本構造で。「こころもカラダも正義の味方」は人工甘味料のまぶされたとっても甘いお菓子なんですな。

エッセンシャルキリングは中東風のかっこしたヒゲ男が砂漠の岩間で向かいから歩いてきたアメリカン3人をバズーカでこっぱみじんにして逃げる話。砂漠ではいっぺん米軍につかまって刑務所らしき場所に収監されるんですけど、どこかへ護送される最中に野豚が原因で護送車が転げ落ちて、運良くひとりだけ逃げ出すことに成功して延々と雪に埋もれた森を逃げ続ける。ヒゲ男は砂漠でつかまる直前にすぐちかくで破裂したミサイルの衝撃で鼓膜が破れたらしくて、なにも聞こえない状態のままひたすら逃げてゆく。殺した米軍兵の服を奪ったりして防寒はなんとかなるものの、食糧がないのでありんこや木の皮をたべたりしてるうちに幻覚がみえてきたりする。ようやく追っ手とは関係のなさそうな地元民と遭遇しても、耳が聞こえないことも手伝って相手はなんもしてないのにいきなりむごたらしく惨殺してしまう。空腹のあまりに地元民とおぼしき子連れ女性を銃で脅しておっぱいから乳を吸ったりもする。この地元民のヒトたちとは言葉は通じずともジェスチャーとかすれば助けてくれたりしただろうに、ハナから殺すか脅すのどちらかしかないような関わりしかしない。そうしてあちこちで乱暴したことが原因で地元警察まで動きはじめていよいよやばくなったとき、唖の女性によって匿われる。言葉はなくとも女性はかれを介抱する。傷の手当をされ、馬を与えられたかれは、あれほど貪欲に続けた逃避行に対する執着がなくなってしまったかのようにしがみついていた馬の背からふいに消え去ってしまう…。むかしの脱獄犯に関する再現ドラマで、収監される刑務所の待遇がヒドければヒドいほど脱獄の情熱が焚き付けられるのに対して、やさしくされるとその情熱がとたんになくなっておとなしく刑務所で暮らしてた件が描かれますけど、アレとおなじようなもんですかね。アンナと過ごした4日間から引き続き「対人に於ける断絶」を描いてるふうなかんじ。暴力じみた一方的関わりこそが生きるちからであって、対話や交流が生まれたとたんに死んでしまうというような。逃避行の原因になった冒頭のアメリカ人とだって話し合いさえすればもしかしたら平和的に離れられたかもしれないのにさ。

モンスターズは怪獣モノつーよりはリアル探検モノがお好きな方むけ。野生の動物じみた生態の宇宙生物が地球に住みついたらきっとこんなふうに定着するんだろうなーとゆうもしもの世界をちょっとドキュメンタリー風に撮った的な話なんですけど、巨大で獰猛な宇宙生物がどうもメキシコのジャングルにいっぱい潜んでるらしくて、その部分が国によって「立ち入り禁止区域」に定められてて法的には進入できないことにはなってるんですけど、どうしてもアメリカに行かなきゃならないヒトが危険を覚悟で踏み入って惨殺されたりしている。で、このメキシコらへんにいる宇宙生物の動きが活発になりはじめたのを危惧して、ある富豪が主人公のカメラマンに南米にいる娘を帰国さす依頼を強引に押し付けてくる。とりあえず安全な方法でアメリカにいくには船しかなくて、その船の乗船券買うにも販売所のオヤジがめちゃくちゃな値段をふっかけてきたり、いろいろあってなんかその券をなくしちゃって結局カネも手間もかかる陸路をいくことになるんですけど、行く先々で武装した兵が必ずいるし、そのヒトたちと同行しはじめると宇宙生物に襲われたとおぼしき飛行機や船の残骸がじゃんじゃんでてきて、しまいには死にたてホヤホヤな死体と出くわすわ実際に襲撃されちゃうわとふつうに地獄めぐりです。なんか巨大宇宙生物をガッチリ撮った写真にはすごい値がつくらしくて主人公がそれ狙っていろいろ撮ってるんですけど、マジ危ないときには撮れてなかったっぽい。富豪娘のやりとりで「笑顔よりも悲劇のほうが高い値段がつく」みたいなことを主人公がつぶやいてた。でまあいろいろ危ない目に遭いつつもアメリカ国境までたどりつくんですけど、高い塀のどこにも見張りがいないうえ、そこからすぐ近くの街が廃墟になって人っ子ひとりいない画ヅラが混沌の侵蝕を思わせてちょっとゾッとした。宇宙からきた獰猛な生物つーとなんかこう人間よりも高等な知能をもって云々みたいなことを考えがちですけど、今作の宇宙生物は野生動物と同じ構造らしくて、人間を攻撃するのも「人類を滅ぼす」みたいな思想をもってやってんじゃなくあくまで生存防衛的な理由から暴れてるだけっぽい。冒頭らへんから頻出する「宇宙生物の活動が活発になって危険です」みたいなのも最後までみるとなんとなく理由がわかります。憎悪とかじゃなく単に繁殖期に入っただけらしい。人間に替わって生態系の頂点に立った生物が実はただのケモノだったっつー。

復讐捜査線は落差感覚を活かした暴力描写がわりと鋭くてよかったです。メルギブはやっぱ悲劇+暴力が映える男だねえ。社会派作品とか銘打った映画でDVの治らない男とか演じさせてほしいなあ。話はなんか核兵器がらみでしたよ。娘さんからの証拠映像は1つの機関に送らずにさっさと動画サイトにでも流しちゃえばいいのに。なんか現代が舞台にしてはメルギブの隠し球の仕込みが妙に古臭いかんじではあった。



  
*…ひさびさに映画みてエッロ!!エッロ!!と思いましたよ。